上司のサポート力の有無が、部下のパートナーにも多大な影響を与える
Jovo Jovanovic/Stocksy
サマリー:上司のサポートの有無は、子どもを持つ共働きの親たちの職場と家庭の充実を左右する。本稿では、どのような理由で、上司のサポートが重要なのかを解説する。また研究の結果から、親たちはいかにしてみずからの職場と... もっと見る家庭の充実に取り組むべきかも提案する。 閉じる

協力的な職場で働くと、パートナーにもよい影響がある

 先日、ワシントン・ポスト紙に、一見当たり前のようで、実は極めて重大な発見が紹介された。マサチューセッツ大学アマースト校の教授で、臨床心理学、発達科学を専門とするモーリン・ペリー=ジェンキンスの研究による発見だ。研究によると、協力的な雰囲気の職場で働いている親は、子育ての役割をより効果的に果たせており、その結果、彼らの子どもの発達面にもよい影響が生じている、という。

 当然ながら、この記事はあっという間に、ソーシャルメディア上で大きな話題となった。「職場での過ごし方が家庭での過ごし方を左右する」という、多くの働く親の実感が言語化された内容だったからだ。

 筆者の一人(アリッサ)は著書Parents Who Lead(未訳)を執筆する過程で、サポートを得られない職場環境(マイクロマネジメントをする上司、家庭に配慮した方針の欠如、心身の不調を抱えながらも業務を行わねばならないプレゼンティズムの文化があるなど)が家族全体に与える悪影響について、共働きの親たちから数えきれないほどの事例を聞いてきた。一方の親が、パートナーの仕事のせいで家庭内での自分の負担が増えて、仕事に全力で取り組めないと不満をこぼすケースもよくあった。

 ただし、嬉しいことに、この話には明るい一面もあった。一方の親が職場で有意義なサポートを受けている場合、彼らのパートナーもまた、親としての役割を十分に果たし、自身のキャリアを十分に追求できると感じていたのである。

 そこで筆者らは、研究チームとして、そして働く親として、次の疑問に挑むことにした。職場における親へのサポート(またはその欠如)は、そのパートナーが家庭と職場で充実した時間を過ごすことにどう影響するのだろうか。

 この問いに答えるために、筆者らは子どものいる共働きカップル100組を選び、パンデミック中の1年半にわたって複数回、調査を実施した。

 まず、一人ひとりに対し、自身の職場環境が仕事以外の生活をどの程度サポートしてくれているかについて、多様な観点から質問した。直属の上司、同僚、より広い意味での組織文化などに関してである。また、カップルの双方に対して、パートナーが共同で子育てを行う親としてどの程度協力的かを含め、家庭生活についても尋ねた。そして最後に、自分が職場と家庭でどの程度充実していると感じるか、という質問をした。

 学術的に言えば、ここでの「充実している」とは、活力と学びという、別々の、ただし関連する2つの心理状態を対象としている。充実している時には活力と情熱がみなぎり、成長と学びが続いている感覚を持てるものだ。筆者らは、一部の共働きの親が、単に日々を乗り切るのではなく、充実した時間を過ごせている理由(特に家庭に多大なプレッシャーをもたらしたパンデミックの期間中に)を知りたいと考えた。

 調査の結果、明らかになったのは、「一方の親が協力的な職場で働いていると、そのパートナーが家庭とキャリアの両面を充実させられる可能性が大幅に高まる」という当初の仮説を裏づける内容だった。データをさらに詳細に分析すると、いくつかの興味深い発見も浮かび上がった。

 第1に、職場における各種のサポートが同等に重要だとは限らないことが明らかになった。上司のサポートは、それ以外の種類のサポート(同僚や、より広い意味での組織文化などによるサポート)と比べて、そこで働く親とそのパートナーの両方に極めて重大な影響を及ぼしていた。言い換えれば、あなたの上司のサポート力という要因を補正したとしても、パートナーの上司のサポート力が、あなたが職場と家庭で充実した時間を過ごせる可能性に影響するのである。

 2点目として、筆者らは組織心理学者として、このプロセスがどのように進行するのかを理解しようと努めた。すると、協力的な上司に恵まれた親は、家庭でもパートナーに対して協力的であることがわかった。上司のサポートのおかげで、彼らは家庭生活により多くの時間とエネルギーを費やせる。育児や家事をより多く担当でき、また、親として子育てに集中的かつ積極的に、忍耐強く向き合えるのだ。

 一言でいえば、上司が非協力的だと、家族のために十分な時間を割くことができない。その結果、家庭運営の負担が不均衡な割合でパートナーにのしかかり、パートナーが家庭と仕事を充実させる余力を奪ってしまう。この影響は、親の性別や子どもの人数に関係なく見られた。

 研究に参加したカップルの職場環境が子どもやパートナーに与える影響については、解明すべき点もまだ多々あるが、ここで紹介した初期段階の発見は、働く親に重要な示唆を与えてくれる。