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リーダーがみずからのメンタルヘルスを語る重要性
10年以上前に全般性不安障害(GAD)と鬱で休職を余儀なくされた時、自分のキャリアは終わったと思った。苦しかった。羞恥心とセルフスティグマ(負の烙印)に飲み込まれ、仕事にどのような影響が及ぶだろうかとおびえ、自分の状況を必死に隠そうとした。そのような私が希望を持てたのは、他のリーダーたちがメンタルヘルスの問題にうまく対処してきたと知ったからだ。
その後、職場のメンタルヘルスの文化を変えることを目的とする非営利団体「マインド・シェア・パートナーズ」を設立し、自分のストーリーを共有するようになって、私だけではなかったと気づいた。それだけではない。誰もが何かしらストーリーを持っているのだ。
ここ数年、著名人やアスリートが自分のメンタルヘルスについて発言する機会が増えているが、組織のリーダーはようやく語り始めたところだ。社会の変革を本格的に進めて、
マインド・シェア・パートナーズでは、組織のリーダーが人々に力を与えるような方法でメンタルヘルスのストーリーを共有できるように、一対一でコーチングを行っている。全社会議など、グループでこのようなストーリーテリングをすることは、オープンになることを促し、組織文化の変革を始めるための最も強力なツールの一つになる。
こうした取り組みの一つとして、「リーダーから始めよう」というキャンペーンを設計した。Cレベルのリーダーがメンタルヘルスについて語る動画や、マインド・シェア・パートナーズが長年クライアントとの経験で培ってきたことをもとに作成した戦略ガイドなどを使って、リーダーが自分のストーリーを共有するように鼓舞し、指導する。本稿ではリーダー・アライ・ストーリーをどのように伝えるか、それがなぜ重要なのかについて、私たちのベストプラクティスを紹介する。
リーダー・アライ・メンタルヘルス・ストーリーのメリット
リーダー・アライ・ストーリーとは、メンタルヘルスに関する個人的な経験を含む、本心からの傷つきやすい、しかし支えとなるようなメッセージである。強いストレスを受けた経験や燃え尽き症候群(バーンアウト)、深い悲しみ、診断名がつく症状など、話題はさまざまで、過去あるいは現在のこと、一度だけのエピソード、継続的な課題、仕事に影響を与えたかどうか、などがあるだろう。
あらゆるレベルのリーダーが、自分の個人的な話を共有することによって、スティグマを和らげ、人間としての浮き沈み、特に業績が高いプロフェッショナルとしての浮き沈みは一般的に起こりうることとして共有する。このようなロールモデルの提示により、脆弱性を弱みではなく強みとして位置づけ、メンタルヘルスに問題があっても成功できるという実例を示すことになる。
実際、マインド・シェア・パートナーズがクアルトリクスおよびサービスナウと共同でまとめた「職場におけるメンタルヘルス報告書 2021年版」によると、調査に回答したCレベルを含む経営幹部は、少なくとも一つのメンタルヘルスの症状を報告する傾向が高いことがわかった。
リーダー・アライ・ストーリーテリングは、研修や意識向上キャンペーンなど、職場のメンタルヘルス対策の継続性を高め、パーソナライズを支援し、その重要性を伝えやすくする。また、従業員がメンタルヘルスのサポートや治療を探して受けようとする際に、メンタルヘルスについて安心して話しやすくなる。
米厚生省の医務総監であるヴィヴェック・マーシーが筆者らに語ったように、「職場で行動を起こし、特にリーダーがみずから個人のメンタルヘルスの話をすることによって、オープンになり、助けを求めることを恥と感じない文化へと変化する」のだ。
プロアメリカンフットボールリーグNFLのミネソタ・バイキングスのCOOであるアンドリュー・ミラーも、私たちのキャンペーンのために作成した動画で次のように語っている。
自分のストーリーをつくる
職場で自分のメンタルヘルスのストーリーをどのように語るかを考える際は、まず、それがあなたの職務上、ふさわしいかどうかを考える。そのうえでリーダー・アライ・ストーリーを組み立てる際は、以下の点を考慮する。
自分のストーリーを伝えるかどうか、どのように伝えるかを決める。組織の文化やあなたの役割、年功序列のレベルなどによって、自分のストーリーを語ることは簡単な決断かもしれないし、そうではないかもしれない。また、過去のトラウマが甦るのが恐いなど、仕事以外の理由で話すのをためらうかもしれない。
不安がある時は、たとえばメンターや信頼できる同僚に助言を求めることもできる。職場で打ち明けるかどうかを考える際は、友人やパートナー、セラピストなど、私生活で安心できるところに意見を求めるのもよいだろう。
共有すると決めたら、どのような形式がよいかを考える。ライブ(対面またはバーチャル)で話をすることは、聞き手にとって特に力強く感じられ、会話のきっかけになるかもしれない。録画で話をすることも、同じような信憑性が生まれ、撮り直しも可能になる。人前で話すのが苦手なら、文章で書いてもよい。自分のストーリーを明かすことに慣れていない時や、対象とする人以外に聞かれたくない場合は、文章や録画は避ける。