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仮想世界での活動が人間のさらなる成長を促す
AI(人工知能)がニュースのヘッドラインを独占し続け、マーク・ザッカーバーグがメタバースからAIに主軸を移すと決定したことで、メタバースは脇に追いやられたように思われるが、メタバースの重要性は変わっていないことを心に留めておくべきだ。
アーリーアダプターの間では、メタバースについて、これから何が起こるのか、あるいは起こらないのかも含め、いまも大きな話題となっている。実際には、メタバースの包括的な可能性と、それが私たちの生活に与える影響を正確に把握している人はいない。すべてはコンピューターとネットワークの能力、そしてユーザーヘの普及率に左右され、その普及率は過去のインターネットのそれとは異なるだろう。
競争が始まっていることは確かだ。エヌビディアやユニティのような大企業がベースとなるインフラを構築するために多額の投資を行っている一方で、ロブロックス、ディセントラランド、サンドボックスはユーザーに選ばれるポータルを目指して競い、タッチキャストやテラゼロといったweb3関連企業は市場シェアを拡大しようと大手ブランドと手を組んでいる。
しかし、ベッドから起き上がったらVR(仮想現実)ヘッドセットを装着し、バーチャルオフィスに向かい、ホログラムの上司から指示を受けるわけではないことも確かだ。
現実世界での交流は今後も多くあるだろうが、「デジタルツイン」と呼ばれる仮想世界で自分のアバターを使い、デジタルオフィスで働くことは、仕事の生産性、つながり、そして成長の機会を増やすことにつながる。
デジタルツイン
メタバースはすでに到来しており、多くの企業が「デジタルツイン」を導入している。これは、物理的な物や人、場所を仮想的に再現したもので、リアルタイムのデータと高度なシミュレーションモデルを用いて、現実世界のプロセスを包括的にデジタルで表現する。
現在、デジタルツインが導入されているのは主にビジネスの現場で、自動車、建築、製造、小売り、通信など、さまざまな業界に新しい可能性をもたらしている。
このような接続された仮想世界を動かすのは、エヌビディアの「オムニバース・エンタープライズ」だ。デジタル世界における協働と創造のための環境を提供している。ゲームやエンターテインメント業界で広く使用されている同社のグラフィック・プロセッシング・ユニット(GPU)は、メタバースにおける高品質のグラフィックや視覚効果のレンダリングに不可欠だ。リアルな仮想環境を構築するためのAIや機械学習アルゴリズムの開発に欠かせないアクセラレーション・コンピューティングにおいても重要な役割を担っている。
こうした技術によってエヌビディアの顧客は、建築、製品デザイン、産業オートメーションなどにおいて、新たな可能性を持つ世界を手に入れた。たとえば、BMWはオムニバースを使い、未来の工場の計画と運用を合理化し、最適化するためのデジタルツインを開発している。エヌビディアのオムニバースによって、何千人ものプランナー、プロダクトエンジニア、ファシリティマネジャー、リーンエキスパートが単一の仮想環境で協働することで、極めて複雑な製造システムの設計、計画、施工、シミュレーション、最適化が可能になった。
デジタルツインにより、BMWのチームは現実世界で取り組みを始める前に、機械のレイアウトをより多くの情報に基づいて迅速に決定し、仮想ロボットを訓練し、設備の設計をテストできるようになった。バーチャルでテストと最適化が可能になったことで、生産計画の効率が30%向上したと同社は主張している。