適切な投資で、放っておいても増えていくお金と違って、ソーシャルキャピタルは、つながりや関係性をメンテナンスすることによってのみ維持できる。かつて高かった評判も、それを維持する努力を怠れば、悪評に転じかねない。たとえば仕事の紹介にしても、あなたが努力して関係を維持しなければ、数年前にあなたの仕事を評価してくれた人が、そのままいまも高評価を維持していて、再び仕事を紹介してくれるとは思えない。ソーシャルキャピタルには有効期限があり、気をつけないと、ある日、銀行口座の残高がゼロになっていた、ということにもなりかねないのだ。
以下の5つのヒントを参考に、顔を合わせない関係では特に、相手からの高評価を維持するように努めよう。
1. 自分の時間を大切に使う
チームで仕事をしている人ならば、誰かのプロジェクトのサポートを申し出たり、自分の担当を超えて人を手伝ったりすると、相手に対して、自分を貴重な同僚として印象づけることができる。協力的な人間として評価され、配置転換のチャンスで候補に上がりやすくなる。社内の他の部署への異動を目指しているなら、これを積極的に行うと、大きな成果が期待できるだろう。
個人で仕事をしている人の場合、誰も自分の価値を落としたり、無償で働きたいとは思わないし、ほとんどの人はそのような余裕もないが、時にはそれを戦略的に行っても許される場合がある。たとえば、そのクライアントの仕事をすることが、信用を高め、貴重な実績になり、他のクライアントに自分の能力を知らせるチャンスだと思うなら、その価値はあるだろう。ただし、そのような取り組みを日常的に行うのはよくない。常にプラスマイナスを検討しよう。
必要に応じて誰かの頼み事を引き受けたら、その人とのソーシャルキャピタルを築く第一歩を踏み出したことになる。それだけでなく、専門知識を深めたい分野で経験を積むために行うならば、スキルセットの空白を埋めることもできる。報酬の一環として、みずからを他者に推薦してもらうことを交渉することは、戦略的な行為として認められる。自分の信用を高め、みずからのウェブサイトにおける貴重な資産とし、次の仕事の紹介につなげよう。
2. コミュニケーションは戦略的に意図を持って行う
リモートで成功するための最大のカギは、相手の行動を喚起するコミュニケーションを取ることである。まず、タイミングを考える。売り込みでも、メールの返信、プロジェクトの進捗報告でも、連絡を取る時には、相手がどこにいるかを常に考えることだ。自分はよくても、相手が勤務時間外にメールでやり取りできるとは限らない。時差がある場合もある。リアルタイムでの返信の確率を高めるために、互いの勤務時間内にメールが届くように、送信や送信予約をしよう。
次に、あなたの言葉は、読み手にしっかりと伝わるものでなければならない。そのためにはまず、相手を知ることから始める。読み手のことを考えるのを忘れる人は多い。相手の経歴や考え方を知るために、少しリサーチしよう。何かを提案しようとしているなら、相手がこれまでに行ってきたことや、どのようなことを求めているのかを知っておいて損はない。
相手に期待を持たせるなら、有言実行を肝に銘じること。自分のできる範囲を正確に評価して、それをやり遂げる。あるいは、期待以上のものを届ける。あなたの言葉に意味を持たせよう。
3. 努力の履歴を残す
キャリアを重ねるにつれ、社内外のネットワークはますます複雑になり、リモートの場合はなおさら把握が難しくなる。少し手間はかかるが、やり取りや紹介をスプレッドシートで管理すると、非常に便利だ。リレーションマネジメントに使えるだけでなく、人同士の点と点を結ぶのにも役立つ。たとえば、友人からの紹介で顧客になった人がいた場合、誰にお礼を言うべきか覚えておきたい。また、フォローアップのタイミングも把握しやすくなる。
4. 受信箱の管理を欠かさない
「受信箱に残るメールがゼロ」とするのは、高すぎる目標かもしれないが、すべてのコミュニケーション手段を管理できるようになると、あらゆるチャンスを活かせるようになる。
受信箱の整理には、ラベルやフィルタなどの機能を活用するとよいだろう。返信が早い人は、仕事も早く、信頼できる人物に見られる。あらゆる方面からメッセージが飛び込んでくるこの時代、レスポンスの早さは、高く評価され影響力も大きい。あなたが連絡を取りやすい人だとわかれば、一緒に働きやすい人として知られるようになる。
ワークライフバランスは誰にでも必要だが、勤務時間外にも、さっと受信メールに目を通し、重要な情報が入っていないことを確かめるだけでも、トラブルの対処に追われるか、チャンスをつかめるかの違いが生まれる。これは、時差のある相手と仕事をする時には、特に重要だ。
連絡が取りにくい人の場合は、この逆のことが言える。頼りにならない人というレッテルを貼られ、チャンスはあまり回って来ないだろう。常識的な時間内(理想的には2営業日以内)に必ず返信するのがベストプラクティスだとされる。答えがまだ出ていない時は、取り組んでいることを伝えるだけでよい。メールを受け取ったという安心感を与えられる。
また、スラックなどのオンラインツールを使ってチームメンバーとコミュニケーションを取っている人は、自分がオンラインかどうかをチームメートが確認できることを覚えておこう。
5. 人に優しく、感謝を行動で示す
人の努力を自発的にサポートしたり後押ししたりすることは、非常に効果的だ。また、誰かがくれたチャンスにお礼を伝えるのに遅すぎることはない。感謝には、有効期限がないのだ。
あまり認識されていないようだが、お礼を伝えるというのは、久しぶりに連絡を取るよい口実でもある。また、もしあなたが誰かに連絡を取り、何も求めずに、状況を聞いたり、相手の仕事に心から関心を持ちサポートを申し出る人なら、多大なソーシャルキャピタルを手にすることだろう。簡単な方法としては、「今日あなたの名前が頭に浮かんだから、お元気だろうかと思って連絡してみました」と言ってみることだ。
あなたの能力は、それだけでは伝わらない。あなたが培う人間関係によって声を増幅する必要がある。ソーシャルキャピタルは、特にあなたがその場にいない時に、あなたの仕事が長続きすることを保証するものだ。どのような仕事をしていても、人脈は、
"Building Social Capital When You Work Remotely," HBR.org, May 15, 2023.