リモートで働きながら社会関係資本を築く5つのヒント
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サマリー:リモートやハイブリッドでのコミュニケーションの中で、相手からの高評価を得るためにはどうすればよいか。ソーシャルキャピタル(社会関係資本)を蓄積するためにはメンテナンスが欠かせない。本稿では具体的なメン... もっと見るテナンス方法を紹介する。 閉じる

あなたはソーシャルキャピタルをどれくらい蓄えているか

 ソーシャルキャピタル(社会関係資本)を蓄えることは、企業内での連携に欠かせないことだが、ハイブリッドやリモートで仕事をする人や個人事業主にとっては、今日、よりいっそう重要になってきている。多くの人がハイブリッドな仕事環境によって「見えない存在」になっているいま、特定の仕事ができるというだけでは、もはや十分ではない。チームメンバーとパートナーを組み、自分を印象づけ、業界内でネットワークを築き、チャンスをつかめるかどうかは、仕事上の人付き合いやコミュニケーションスキルの高さにかかっている。

 他の通貨と同じように、ソーシャルキャピタルも、獲得し、投資し、使うことができる。仕事を長く続けていくことに関していえば、あなたが保有するソーシャルキャピタルほど大きな財産はない。さて、あなたには「蓄え」がどれくらいあるだろうか。

ソーシャルキャピタルとは何か、筆者はどう活用したか

 ソーシャルキャピタルを増やせるかどうかは、人と価値観を共有し、共通の目標に向かって効果的に協働できるかどうかにかかっている。ソーシャルキャピタルは、企業内ではコラボレーションの向上につながるが、リモートで仕事をする社員や個人事業主、ギグエコノミーのメンバーにとっては、成功するために譲れないものである。ハイブリッドやリモートワーク環境で働く難しさも相まって、チャンスを与えてもらえるか、除外されるか、忘れ去られるかの分かれ目となるのが、ソーシャルキャピタルなのだ。

 17年間勤めたラグジュアリーブランドでのキャリアを捨て、コンサルティングの道に進んだ筆者は、大企業のオフィスの一員から、リモートで独立して働くようになった。有名な小売グループの社員としての信用も、幹部の肩書も失い、営業で頼りになるのは自分自身だけだった。20年近く積み上げてきたソーシャルキャピタルが、電話やメールを返してもらうための、みずからの能力を支えてくれた。

 筆者は、人とのつながりを維持し、相手のキャリアに誠実な関心を示す一方で、将来はコンサルティングの仕事をしたいという自分の夢を知ってもらうことが大切だとわかっていた。そのため、何も求める必要のなかった頃から、重要な人たちに時折、連絡を取り、相手の状況や仕事について尋ねていた。相手のSNSをチェックして、投稿の拡散や支持をしたりして、何かの時に自分の名前を一番に思い出してもらえるように努めた。

 いよいよ売り込みやお願い事をすることになった時には、依頼内容と、お返しに自分も相手をサポートするという内容の、説得力のあるメールを書いて送った。相手の貴重な時間に配慮して、単刀直入に簡潔に書くよう心がけた。筆者は「なくてはならない存在」になるためには「いつでもつかまる人」であることが重要だと考えている。そこで、迅速な対応を保証するために、受信箱を常にチェックした。何があってもすぐに対応できるようにしておくことが決定的に重要だと思ったからだ。自分の働きかけに返信がなかった場合は、1週間以内に適切な方法でフォローアップするようにした。

 いったん仕事が決まれば、積極的にコミュニケーションを取るのは自分の仕事だとわかっていた。リモートのコンサルタントとして、仕事の状況をきちんと把握していることを経営陣に知ってもらうと同時に、チームと有意義なつながりを築くことが必要だった。そうすることによって、最新の情報を受け取ることもできた。

 その場にいなければ、外部である筆者に指示を伝えなければならないことなど、簡単に忘れられてしまう。常に人々の目に留まり、信頼できることを示し続ける必要があった。一人の顧客とよい結果を残せば、自然と次の紹介につながる。

 この問題は、リモートで働く社員にとっても同じだ。そばで仕事をしていないと、取り残されたり、孤独を感じたりしがちだ。リモート社員は、出社している社員以上に、組織文化に積極的に携わる努力をする必要がある。それはつまり、積極的に、取りすぎるくらいコミュニケーションを取り、チームメートとバーチャルにお茶をするといった努力をすることである。

 対面と遠隔の2つの生活を行き来するハイブリッド型社員は、出社日がミーティングで埋まることも多い。そのため、関係構築のバランスを取り、物理的に会う同僚以外にも目を向ける必要がある。

ソーシャルキャピタルを築くために必要なスキルと価値観

 ソーシャルキャピタルを積める人と積めない人の違いは何だろうか。それは、その人の信念や職業倫理、そして時には計画性や几帳面さによって決まる。

 あなたが強い信念や確固たる職業倫理の持ち主ならば、当然、人には公正に対応したいだろう。約束した仕事は、何としてもやり遂げたいし、それができなかったら相手を失望させるのと同じくらい自分も傷つく。

 言葉には、意味を持たせるべきだと筆者は考えている。何かをやると言ったら、最後まで責任を持ってやるということであり、それが仕事のスコアカードに集計され、自分を判断する材料になる。それでも、遂行機能(段取り、優先順位付けなど)や自己管理能力を高めるには、ToDoリストを作成するだけでは不十分かもしれない。それよりも、スケジュールに「自分とのミーティング時間」を入れて、個々のタスクを行う時間をブロックしたほうがよい。そうすれば、与えられた時間内に必要なことをやり遂げ、約束を守れるようになる。

 約束したことを実行するメリットは明白なのに、人を紹介してくれると約束した相手が、それっきり音信不通になってしまったことが何度あっただろう。人に依頼したことが不完全なまま、あるいは期限を過ぎて戻ってきたことが何度あっただろう。数え切れないほどだ。約束を果たさないことのリスクは、果たさなかったら、「信頼できない人」というレッテルを貼られてしまうことなのだ。

 反対に、一緒に仕事をしたいと思わせる、定評のある、頼りになる人の名前は、すぐに挙げられるに違いない。この人たちは、何を頼んでも、期日までにきっちり仕上げてくると確信できる人たちだ。だからこそ、何度でも声がかかる。その場にいなくても思い出してもらえる。そうやって、定評のある人たちは、あなたとのソーシャルキャピタルを築いてきたのである。