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反シニシズムの組織文化を構築する
ジェイソンが筆者とエグゼクティブコーチングを始めたのは、ちょうど彼の会社が年末の忙しい時期を脱した頃だった。チームリーダーが突然退職したため、輪をかけて忙しかったという。メンバーたちは怒りを爆発させ、権力闘争が起こり、会議は罵り合いや人格攻撃に発展し、「ショッキングなほど醜い」状態になった。
だが上層部は、「人事の問題」
ジェイソンの話は、燃え尽き症候群(バーンアウト)の主要な側面の一つでありながら、あまり理解されていない「職場の冷笑主義」(シニシズム)を浮き彫りにしている。最近、筆者は、このように幻滅したり、組織への信頼感を喪失したりすることに悩む労働者が増えているのを目の当たりにしている。リーダーは、職場のシニシズムの原因と影響を認識し、反シニシズムの組織文化を創造するための措置を講じる必要がある。
職場のシニシズムの危険性
ジェイソンの場合は、複数のストレスが短期間のうちに重なったことにより、急速にバーンアウトへと陥ったが、ほとんどの場合は、職場のストレスが長期にわたり対処されないことが原因で発症するため、一般的なケースはこれほど劇的ではない。しかし、だからといって苦痛が少なかったり、影響に緊急性がないわけではない。心血管疾患、筋骨格系の痛み、不眠症、抑鬱症状、疲労、免疫機能の低下、頭痛以外にも、バーンアウトの悪影響は数多くある。燃え尽きた従業員は、欠勤しやすく、仕事の満足度やパフォーマンスも低下しやすい。
筆者のクライアントや会議参加者、調査参加者は、現在の仕事について、このように語っている。
バーンアウトの公式な定義はないが、専門家の間では一般的に、次の3つのコア属性によって特徴づけられる「職場の症候群」であると認識されている。(1)消耗や疲労、(2)
上記(2)の「職場のシニシズム」は、その複雑さゆえに、最も理解されていないバーンアウトの側面だろう。原因や影響が比較的単純な(1)「疲労」と(3)「自己効力感の低下」とは対照的に、シニシズムは、職場のさまざまな要因によって引き起こされ、幅広い感情状態や行動として現われる。
バーンアウトに関する初期の研究では、シニシズムは「脱人格化」と呼ばれ、自分が仕える人々から過度に切り離された状態であるとされていた。しかし、これは単に距離を感じることではなく、精神的、感情的に疎外された結果、周囲の人々の個性や人間らしさが失なわれていくように感じる状態である。クライアントを顔のない「案件」として見ている人や、スタッフを表計算ソフト上のデータセットとして見ているマネジャーなどが、脱人格化に陥った労働者の例である。
最近の研究では、シニシズムの定義が拡大され、クライアントや顧客、仕事に対する否定的な態度や不適切な態度、仕事中のイライラ、理想主義の消失、仕事からの離脱も含まれるようになった。シニシズムは、無気力、悲観、諦め、離脱、無関心、絶望、怒り、無感覚、成績不振、行き詰まり感、信頼の喪失などの形で現れる。
どのような形で現れるにせよ、職場のシニシズムは、けっして何らかの性格的欠陥や、悲観的思考(コップの水が「もう半分しかない」)