迅速に勝てるチャンスを探せ

 波乱の時期には、誰もが救世主を探している。新人から経営幹部まで、職場の士気や自信が揺らいでいる可能性が高い。改善すべき領域を見極め、素早く行動することで、あなたは会社の最善の利益を踏まえつつ、結果を出す貴重な人材だと自分を位置づけることができる。

 わずかな時間で形あるインパクトを与える方法を探そう。

・サプライヤーと契約の再交渉をする。
・より安い資材の調達源を探す。
・他部門と協力してリソースを節約する。
・自動化を導入してプロセスの合理化を図る。
・未開拓の顧客層に製品を投入する。
・リピート買いを促進するキャンペーンを展開する。

将来のために交渉する

 バイスプレジデントのポジションそのものがなくなった後、マーロウは上司に、会社の経営面での制約があることや、プロセス最適化のポジションがなくなった理由は理解していると伝えた。そのうえで、自分の長期的な目標と組織のニーズとのバランスの取れた提案を示した。

「いますぐ大きな変革を起こすのが難しいことはわかりますが、将来的に私の担当範囲を見直す可能性について、お話を伺えればと思います」と彼女は言った。「いまはXを担当しますが、将来、市場が上向いた時、私がプロセス最適化を担当する可能性を探るとお約束いただけますか」

 マーロウのように、あなたも「その場の空気を読む」ことが大切だ。いまはポジションや仕事内容や報酬について、大幅な変更を求める時期ではないのかもしれないが、のちのちの約束を取りつけることはできる。たとえば、「いまはXを喜んで担当しますが、将来的に担当領域を見直すとお約束いただければ」とか、「お手伝いしたいと思いますが、私の最終目標はYの領域です。それはいつ頃可能になりそうですか」という聞き方もできるだろう。

横に動く

 会社が人員削減を進めている時期は、昇進が制限されるかもしれないが、横の異動でも新しいスキルや経験を積むチャンスになる。自分のスキルの幅を広げて、より多才になれば、組織にとってより価値の高い人材になれる。現在営業職に就いている人が、商品開発チームに異動になれば、商品開発のプロセスや市場調査、顧客ニーズ分析の理解を深めることができる。また、営業面からのインサイトを提供すれば、会社は市場の需要により合致したプロダクトを提供できるようになる。

 横への異動は、新しい同僚と知り合って、プロフェッショナルとしてのネットワークを広げることにもなる。それは将来のプロジェクトでコラボレーションをしたり、メンターを得たり、社内政治について幅広い知識を得たりする機会への扉を開く。新たなステークホルダーや意思決定者、上級管理職との出会いもあるだろう。知り合いが増えるほど、すなわち、あなたを知る人が増えるほど、チャンスも増える。

 会社のリストラ中にキャリアアップを図るためには、考え方と行動の両方を変える必要がある。本稿で示した戦略を取り入れれば、逆境を成長の足がかりに変えられるだろう。


"How to Advance Your Career When Your Company Is Downsizing," HBR.org, June 19, 2023.