会社が事業を縮小する中でもキャリアアップを図る方法
HBR Staff/Simone Hutsch/Unsplash
サマリー:会社が事業を縮小する中、多くのリーダーやプロフェッショナルは落胆して、どのようにキャリアアップを図ればよいのかわからずにいる。しかしこうした状況は、キャリアの見通しを絶望的なものにするとは限らない。む... もっと見るしろそれは、成長の足がかりになることもある。そこで本稿では、コスト削減に伴う混乱を乗り切り、より強く成長する方法を紹介しよう。 閉じる

不況でキャリアの岐路に立たされるリーダーたち

 マーロウは、あるメーカーのオペレーション責任者として頭角を現した。彼女のチームは1年で2倍の規模になった。それは激しい変化の時期も彼女が見事なリーダーシップを指揮して、重要なサプライチェーンイニシアティブを推し進めた手腕による部分が大きい。

 その実績と献身により、マーロウに素晴らしいチャンスが与えられた。新設されるプロセス最適化担当バイスプレジデントの座だ。昇進は彼女が目標としてきたことであり、会社の将来により大きなインパクトを与えるチャンスでもあった。

 ところが、マーロウが重要な一歩を踏み出そうとする矢先に、市場が低迷期に入り、会社の業績も急速に悪化した。景況感の悪化で、会社は難しい決断を迫られた。マーロウのチームは半分の規模に縮小され、さらに悪いことに、彼女が熱望していたバイスプレジデントのポジションもなくなった。マーロウは岐路に立たされた。自分の夢が頓挫したかのように見える時、どのように前進すべきかを自問した。

 多くのリーダーやプロフェッショナルが、マーロウと同じような立場に立たされている。会社が事業を縮小する中、彼らは落胆して、どのようにキャリアアップを図ればいいのかわからずにいる。2023年に入ってから、米国企業のレイオフが5倍近くに増え、不安定な経済に終わりが見えないのだから、無理もない。

 組織は常に業績を意識して、コスト削減の方法を探している。これは、支出の凍結や人員削減のような壊滅的な変化を意味する場合もあるが、あなたのキャリアの見通しを絶望的なものにするとは限らない。むしろそれは、成長の足がかりになることもある。そこで本稿では、コスト削減に伴う混乱を乗り切り、より強く成長する方法を紹介しよう。

考え方を変える

 組織が混乱している時に、さまざまな感情(悲しみ、怒り、自分に対する疑念など)を抱くのは自然なことだ。だが、心を閉ざしたり、状況を避けたり、自分を哀れんだりしても、何も変わらないし、行き詰まりを感じるだけである。それより、変化や先行きが見えない状態も、仕事の一部として受け入れよう。

 理由がテクノロジーの進歩であれ、市場ダイナミクスの変化であれ、顧客の期待の進化であれ、企業は急ペースで再編を進めている。どのような時も大小の変化に対応できるようにしておく必要がある。困難な時こそ、あなたの本質が明らかになり、あなたのリーダーシップが最も必要とされる領域が明らかになる。激変する状況において、価値を提供し、レジリエントで、影響力があり、ポジティブな変化をもたらすリーダーとして、頭角を現すチャンスを得る選択ができるのだ。

空白を埋める

 これまで以上に努力して、移り変わる状況により生まれた空白を埋めよう。変化は動揺をもたらす可能性がある。だからこそ安定性が重要なのだ。自分の努力を、会社の新たな重点事項(一般に中核商品への集中、経費節減、業務効率化、従業員と顧客の維持など)と一致させよう。

 挫折を経験しても、マーロウは不況時のコスト削減と、主要事業分野に集中することの重要性に気づいた。マーロウは、チームの努力を、必須業務だけに集中させた。いくつかのイノベーションプロジェクトを中止しなければならないのは苦渋の決断だったが、マーロウの抜け目のない行動は経営幹部の目にとまり、彼女の戦略的な優先順位付けは高く評価された。