
退屈は必ずしも無駄なものではない
仕事が退屈だ──誰でもそう感じることがある。退屈とは、満足できる活動に没頭したいのに、なぜかできないという経験だ。そして、忙しさはその解毒剤にならない。忙しさと退屈さを、同時に味わうことになるだろう。
私たちは人生の早い段階で、退屈は楽しいものではないと学ぶ。さらに歳を重ねるにつれて、退屈を時間の無駄と見なし、さらに生産的なことや面白いことをする機会を逃したと思うようになるかもしれない。
退屈とは、よく言えば不快で嫌悪感を覚える経験であり、悪く言えば無意味であるという深い感覚を呼び起こす状態だと考えられてきた。また、退屈に伴う不快感を抱えていると、時間の流れが遅くなりがちで、働いている日々が果てしなく長く感じられる。
そう考えると、退屈が退屈を呼び起こす状況、つまり仕事から逃れたいという強烈な欲求をしばしば引き起こすのも不思議ではない。現代の「つながっている」世界では、この逃避はタップ一つで実現する。あなたの指先には、データ、ニュース速報、番組やストーリー、友人や家族からのメッセージ、画像ファイル、ミーム、ビデオクリップなど、少なくとも表面的には退屈を感じずに済む世界が広がっている。
研究によると、スマートフォンの使用は気持ちを紛らわすだけでなく、ドーパミンの中毒的な放出をもたらし、一時的に退屈の不快感を快楽に置き換える。ただし、こうした感覚は束の間で、何も考えないスクロールは長期的にメンタルヘルスや生活の質を低下させる。
仕事中に忍び寄る退屈を感じたら、スマホに手を伸ばす前に、一呼吸、置いてみよう。退屈には重要な利点がある。自分が何を感じているのか、なぜそれを感じているのかに意識を向けなければ、利点を見逃してしまうだろう。
職場における退屈の長所と短所
退屈がネガティブに受け取られるのには理由がある。仕事において退屈は、不快感や新しい役割への絶望感、あるいは一日がとにかく終わってほしいという願いに火を点ける非生産的な状態と見られがちだ。危険な意思決定やコストのかかるミス、不注意や集中力の欠如が引き金となる事故にもつながる。退屈が生み出す疲労については言うまでもない。
退屈は、「サイバーローフィング」(仕事に関係のないブラウジング)や幼稚な感情的反応など、さまざまな問題行動も誘発する。単調な活動に長時間さらされると、幻覚を見ることさえある。ウェルビーイングに関しては、最近のある研究から、仕事の退屈と燃え尽き症候群(バーンアウト)、仕事の満足度の低下、退職願望の増大に関連があることがわかっている。
その一方で、最近の研究によると、退屈は建設的に対処すれば、大きな「明るい側面」をもたらす。気が散りやすく、圧倒され、過剰に刺激されるように設計された世の中で、退屈なひと時は脳と体に小休止を与える。
退屈という感覚は、創造性や新しいアイデア、革新性を育むような空想にふける余裕をつくり出す。退屈が長く続くと、内省して、「自分は正しい道を歩んでいるのか。正しいことをしているのか」と自問したくなるだろう。
退屈をよい方向に利用する
だからと言って、一日の大半を退屈だと感じながら過ごすような仕事を探そうということではない。しかし、退屈と上手に付き合い、退屈をよい方向に利用することで、退屈の明るい面を見ることができる。その方法は次の通りだ。
1. 気づく。退屈の不快さが近づいてくるのを感じても、すぐに対処しようとしない。自分が退屈していることに気づいたということは、機械的にスマホに没頭したい衝動に、束の間でも抗うことができたということだ。退屈に気づき、退屈という感情だと認めて意図的に方向付けをすると、レジリエンスを高め、退屈をポジティブな目的で利用する機会が生まれる。肝心なのは、退屈の発作が起きても、不快から逃れるために、仕事を辞めるなどの何らかを即断しないことだ。
2. 解釈する。退屈の経験はすべて同じではない。研究によると、さまざまなタイプの退屈が異なる形で心身に現れ、異なる行動を引き起こす。自分が感じている退屈はどのタイプなのかを早い段階で読み解くことで、対処するためのゲームプランを立てたり、退屈がエスカレートすることや意思決定が鈍ることを防いだりしやすくなる。
退屈があなたに何を語りかけているのか、自問してみよう。休むまもなく働き続けて疲れたから、ささやかな休憩が必要なだけかもしれない。仕事が単調になり、やる気やエネルギーを失いかけているのかもしれない。
何に退屈しているのか、具体的に考える。自分の役割に退屈しているのか、仕事の内容や形式に対してか、仕事における将来の見通しについてか。この不快な感覚を引き起こす典型的な仕事のパターンが見えてくるだろうか。これは、自分の目標や価値観について考え、自分が前進していると感じているのか、それとも「行き詰まり」を感じているのかを考える機会にもなる。
自分の退屈を解釈するために、研究に基づく退屈の5つのタイプを挙げる。