1. 何があったか。たとえば、計画したアクションはこの1週間でどう展開されたか。パイプラインの進捗や、主な成果としてどのような動きがあったか。顧客や市場について何を学んだか。
2. 次は何をするか。たとえば、翌週注力すべき見込み客や顧客は誰か。どのようなアクションを取るべきか。どのようなオファーや価値を伝える必要があるか。どのような顧客アプローチや進捗に力を入れるべきか。
3. マネジャーはどのようなサポートができるか。たとえば、来週の取り組みをサポートするために、マネジャーには何ができるか。他の部署からどのようなサポートを得る必要があるか。
営業マネジャーは、スプリントでのディスカッションを利用して、営業担当者が、大規模で複雑な営業戦略(例:製品ポートフォリオの販売拡大など)を、より小規模で管理しやすい機会別の営業活動に分解できるよう支援した。たとえば、垂直市場Aで顧客CにソリューションBを販売するため、意思決定者Dと話して価値提案Eを示す、などといった形に分解する。
また、最も成長可能性の高い顧客に多くの時間を費やせるように、毎週のスケジュールを組んだ。プランニングのミーティングでは、どうすればデアセロの全製品群が主要顧客のニーズをうまく満たせるかに焦点を絞った。
営業チームでのスプリント活用がうまくいったことから、デアセロはより多くの部門や組織全体でもスプリントを使用するようになった。営業、マーケティング、製造のエグゼクティブチームは、2カ月に1度スプリントミーティングを開き、特定の市場機会に向けて足並みを揃えるようになった。そのうえで、営業担当の経営幹部は、営業マネジャーと協力して、四半期予測を営業担当者ベースの成績評価基準に落とし込んだ。
デアセロは、CRM(顧客関係管理)プラットフォームでも、スプリントの活用を支持した。こうして組織全体のマインドセットとプロセスが変わり、デアセロは製造したものを販売するのではなく、市場が必要とするものを製造するようになった。
結果は目覚ましかった。顧客へのアプローチに焦点を絞るようになったことで、営業担当者が各顧客に販売する製品群は、従来から平均8%拡大した。新たな組織になってから最初の6カ月で、営業担当者が以前は達成不可能と思われていた販売目標を上回り、16%の増収を達成した。
なぜセールススプリントは効果的なのか
セールススプリントが業績アップにつながる理由について、営業担当者と営業マネジャーの声を紹介しよう。
・戦略から実行への移行:「これまでの四半期計画は、チェックボックスにチェックを入れていくようなものでした。……スプリントは計画をダイナミックでアクション可能なものにしました」
・組織全体でのコラボレーション:「このようなディスカッションはいままでしたことがありませんでした。マーケティングと営業が一緒にブレインストーミングをすることで、目立った変化をもたらすアイデアが生まれました」
・インサイトをアクションに結びつける:「これまでのアプローチは一般的で、個別のケースとの結びつきが薄いものでした。スプリントのおかげで、市場動向を常に把握し、営業目標の達成につながる重点的なアクションに集中できるようになりました」
・顧客にフォーカスする:「顧客の意思決定者へのアプローチ方法を毎週話し合うことで、顧客と話をする時、重要なポイントに集中できるようになりました。きめ細かい対応ができるようになったのです」
製造業、テクノロジー、ヘルスケア、コンサルティングなど、さまざまな業種の企業が、変化の激しいデジタル分野で成長を維持すべく、営業スプリントを利用して、変わる戦略を実行に結びつけている。こうした組織は、部門横断的なコラボレーションや、成長戦略と結びついたインセンティブ報酬プラン、営業パイプラインのギャップを見つけるCRMダッシュボードなどを活用して、スプリントの成功を加速させている。
セールススプリントは、組織が戦略と実行を同期させ、顧客が毎週、毎四半期、そして毎年「勝つ」ため、自社が提供する製品やサービスの価値を高めることに役に立っている。
"Using Sprints to Boost Your Sales Team's Performance," HBR.org, July 20, 2023.