
チームの状態をリセットする
あなたのチームは、行き詰まっていたり、停滞していたり、少し活気を失っていたりしないだろうか。あるいは、もはや有効ではないルーチンに陥っていないだろうか。
もしそうだとしても、それ自体はよくあることだ。そこで、チームは時折、軌道修正を行わなくてはならない。それは、平穏な時期でも必要なことだ。ましてや、今日のような激動の時代には、まったく新しい針路を見い出さなくてはならない場合もある。
いま、コロナ禍におけるリモートワークが終了して、オフィスへの出勤が再開されたり、ハイブリッドワークへの移行が進んだりしている状況に対応することが求められている。それでも幸い、チームをリセットすることは、一般的に思われているほど難しいことではない。
リセットの最初のステップは、いまあなたのチームで何がうまくいっていないのかを明らかにすることだ。問題の原因は、大きく2つに分けられる(両方に該当するケースもありうる)。
一つは、チームがパーパスを見失い、目標が見えなくなっているケース。この場合、リセットに当たって重んじるべきなのは、パーパスや目標のすり合わせである。もう一つは、チームとしての一体性が失われているケースだ。メンバーが結束できていなかったり、自分が正当に評価されていないと感じていたり、不満を募らせていたりするパターンがこれに当てはまる。このような状態に陥ると、些細な問題が対立の原因になりかねない。この場合、リセットで重んじるべきなのは、チームの活力を活性化させることだ。そこで本稿では、この2つのアプローチをどのように実践すべきかを説明する。
すり合わせ
まずは、活性化よりもすり合わせから着手すべきだ。その理由は2つある。第1に、多くのチームの機能不全は、信頼に関わる問題という形で表面化するが、その根本的な原因は、目標、優先事項、期待がチーム内で一致していないことにある。これらの点をめぐる誤解を取り除くことにより、対人関係の問題だと思われていた問題を解決できる場合が多い。
第2に、すり合わせに伴うリセットは、外的な転換と結びつき、個人の行動に関わる問題と結びつかない。その結果、メンバーが無闇に自己防衛反応を起こしにくいという利点がある。すり合わせの過程では、誰かに評価を下すことはしない。あくまでも、チャンスを生かし、新たなリスクを緩和するために、どのように進化すべきかに焦点を当てるのだ。
以下に、すり合わせを行うためのカギとなる要素をいくつか挙げる。あなたのチームの状況に最も適合したものを選んでほしい。
チームの使命をリセットする
まず、チームのパーパスを進化させる必要があるケースだ。その可能性を掘り下げるには、以下の問いを検討することが有益だろう。
・どのような外部のトレンドに適応する必要があるか:外部環境で最も影響の大きな変化はどのようなものか。その要素は、あなたのチームを取り巻く状況をどのように変えるのか。たとえば、コンテンツマーケティングを担うチームの場合、対話型AIのチャットGPTは、チームの価値をどのように変えるだろうか。
・会社の戦略変更に伴い、チームに求められる役割はどのように変わるか:あなたの会社では、あなたのチームの役割を変えるような新しいビジョン、戦略、KPI(重要業績評価指標)を打ち出そうとしているか。たとえば、人事部門のチームの場合、自社が欧州事務所を新たに開設することにより、新しい能力や活動が求められるようになるだろうか。
・会社が変化する中で、あなたのチームの価値はどのように変わるか:会社が成長し、変化を遂げれば、社内のチームに期待される役割も変わる。あなたのチームが重視すべき点をどのように変えていけばよいだろうか。たとえば、R&Dを担当するチームの場合、これまで一つの部署をサポートしていたところから2つの部署をサポートするように変わった時、どのように業務内容を調整すればよいだろうか。
チームの目標をリセットする
チームの使命が変われば、目標を見直すことが不可欠であるのは言うまでもない。しかし、使命が変わっていない場合でも、目標を刷新したほうが好ましいケースがある。そこで、目標を変更すべきかどうかを考えるために、以下の問いを検討しよう。
・過去の結果を受けて、どのように行動するか:あなたのチームは、前四半期にどのような成果を上げたか。それにより、向こう数四半期に期待する内容がどのように変わるか。これまで目標を達成できていたとすれば、目標が低すぎないか。逆に、目標をずっと達成できずにいるとすれば、メンバーの士気を低下させないために、目標を引き下げる必要はないだろうか。
・外的要因により、チームの目標はどのような影響を受けるか:チームを取り巻く外的要因の中に、目標変更の必要性を示唆するものはないか。たとえば、景気後退やサプライチェーンの停滞、働き手不足などを受けて、期待を引き下げる必要はないか。逆に、あなたのチームがテクノロジーの進歩により恩恵を受けているのであれば、計画以上の成果を上げられる可能性はないか。
・評価指標をよりよいものにするために、どのようなことができるか:あなたのチームが掲げている目標は、曖昧なものになっていないか。成果を評価するための指標は、漠然としたものになっていないか。すり合わせを改善するための最も手っ取り早い方法は、成功の定義をより厳密にしたり、評価指標を修正したりして、目標に向けて順調に進んでいるかどうかを判断しやすくすることである場合が多い。