活性化

 すり合わせに加えて、もう一つのタイプのリセットは、チームを活性化させるというアプローチだ。あなたのチームは、真のチームとは呼べない状態になり、人々の緩やかな集合体に成り下がってはいないか。チーム全体として、個の総和以上のものを生み出せなくなっていないか。さらにひどい場合は、不信感が蔓延したり、不健全な対立が生じたりして、チームで行動することにより、むしろ成果が減少していないか。このようなケースでは、リセットを行うに当たり、チームが何をするかではなく、それをどのように行うかを重んじるべきかもしれない。

チームが持っているコミュニケーションの癖をリセットする

 時間が経過するにつれて、チームの活力が減退して、人と人の結び付きを希薄化させるようなコミュニケーションのパターンに陥ってしまう場合がある。その点、チームのコミュニケーションの癖を再検討することは、人と人のつながりを取り戻す一歩になりうるかもしれない。

・コミュニケーションの手段を変更することはできないか:あなたのチームは、伝達したいコンテンツに最適とはいえないコミュニケーション手段を当然のものとして用いていないか。たとえば、情報伝達のためにビデオ会議システムを、議論のためにメールを使っているとすれば、それは逆だ。ビデオ会議システムのように、情報量の比較的多いコミュニケーション手段は、新しいコンテンツ、対立のある議論、馴染みのない参加者がいる状況のために使用できないか。一方、単に情報を伝えるだけであれば、メールで十分ではないか。

・同期型のコミュニケーションが必要なのは、どのようなケースか研究によると、平均的な働き手が会議に費やす時間は、コロナ禍前に比べて2倍以上に増えているという。会議のような同期型のコミュニケーション手段ではなく、非同期型のコミュニケーション手段を採用することにより、メンバーがさらに自分のスケジュールをコントロールしやすくすることはできないか。

・どうすれば、コミュニケーションの遮断時間を設けられるか:膨大な数の会議に追われていることに加えて、ほとんどの働き手は途方もない量のメールにも悩まされている。そこで、メールなどの通知を「オフ」にしてコミュニケーションの遮断時間を設け、仕事に集中できる時間を確保するには、どうすればよいのか。どうすれば、人々が集中を妨げられずに働く時間を増やせるのだろうか。

チームの会議をリセットする

・常設の会議のあり方を最適なものにするには、どうすればよいか:会議の効率を向上させるうえでは、一つの会議で取り上げるテーマを同質のもので統一することが有効だ。異なる発想と行動が必要とされるテーマごとに、別々の会議を設定することはできないか。

・会議の出席者リストを変更する必要はないか:会議で交わされる会話をリセットする方法の一つは、出席者を変えるというものだ。あなたが出席することをやめて、メンバーに任せてもよい会議はないか。新しい出席者を加えて新しい発想と視点を取り入れることにより、生産的な意見の相違を生み出せるケースはないか。

・さらによい準備をして会議に臨むようにできないか:非効率な会議は、腹立たしく感じられるものだ。よりエビデンスに基づいた思慮深い意見がやり取りされるようにするために、事前に配付する資料を改良できないか。

チームの力学をリセットする

・採用すべき新しいルールはどのようなものか:もしかすると、あなたのチームでは、基本的なルールが存在したにもかかわらず、いつの間にか形骸化してしまっているかもしれない。あるいは、そうしたルールの類いを設けたことがない場合もあるだろう。これまで容認されてきた行動のなかで、今後は新しいルールに則り、やめさせるべきものはないか。新しいルールを設けて、奨励すべき行動はないか。メンバーの行動に関するルールを見直すことは、リセットのための有効な方法になりうる。

・先送りにしてきた対立の「負債」をどうすれば解消できるか:あなたのチームは、物事の優先順位やトレードオフの関係、信頼と敬意の欠如といったことに関して、難しい会話を避けていないか。もしそうだとすれば、その問題をオープンにして話し合い、前に進まなくてはならない。

・どのような活動を行えば、メンバーの相互理解を育めるか:チームの活力が損なわれている場合は、外部の専門家の助けを借りて、正式なチーム開発の活動に取り組んでもよいかもしれない。たとえば、計量心理学のツールやグループコーチングを導入することにより、メンバー間の信頼を育み、率直な姿勢を後押しできるかもしれない。

 もしあなたのチームが多くのことを成し遂げていて、それにもかかわらず、物事を進めることが難しくなっていると感じているようであれば、ここまで紹介してきたアプローチが役に立つだろう。以上の点を検討することにより、より健全で、より幸せなチームを築き、チームの活力を高めることができる。

 最後に、リーダーであるあなた自身についてだ。チームのリセットについて検討するだけでなく、この機会に、あなた自身のアプローチをリセットすべきかどうかも考えてみよう。たとえば、仕事に注ぎ込む時間とエネルギーが不健全なくらい多くなっていないか。大量の仕事を抱え込みすぎる一方で、チームのメンバーに任せる仕事の量が少なくはないか。チームのリセットを目指すタイミングは、リーダーとして自分にどのようなリセットが必要かを考える好機でもある。


"20 Questions to Ask When Your Team's Vibe Is Off," HBR.org, July 19, 2023.