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すべての企業はAI活用について検討すべき
筆者は最近、多くの人々と同じようにスマホでライドシェア(相乗り)のアプリを利用した。アプリは何の変哲もなく、深く考えるほどのものではなかった。簡単で便利なライドシェアは、いまや800億ドルを超える規模の産業である。だが、ほんの少し前までは影も形もなかった。車はあったし、乗る人もいたし、運転する人もいた。だがライドシェアが機能するには、スマホが必要だった。スマホが登場した時、それまで想像できなかったような、とてつもなく多様な便利さと新しい体験が生まれた。そのうちのいくつかは産業にまで発展したのである。
AI(人工知能)も同じような「触媒」である。私たちがまだ十分に想像できず評価もできないような可能性を秘めた、真の変革的テクノロジーの新しい波である。AIは現代の決定的なテクノロジーとして、生活や仕事のやり方を一変させるだろう。筆者はテクノロジー分野でキャリアを積んできたが、いま、かつてないほど胸が躍り、楽観的になっている。マイクロソフトの同僚の一人は、AIについてこう言う。「古いことをよりよく行うためには『新しいもの』を使う必要がある。そしてその新しいものを使って、新しいことをするのだ」と。まさに、その通りだ。
医療を例に取ろう。ソフトウェア企業のペイジはAIを利用して、医師ががんを発見し、診断し、治療する方法を変えた。適切に訓練され調整されたモデルを備えたAIは、何千ものデジタル病理画像を画素ごとに読み取り、より迅速かつ正確に異常を検知できる。こうしたツールが病理学者や医師だけではなく、患者に何をもたらすか想像してみよう。病気の早期発見とより健康な生活を可能にし、より長い時間を愛する人々と過ごせるようになるのだ。
規模や業界を問わず、企業はいま、AIの活用について検討すべきである。AIは、特定の狭い目的のために設計された、機械学習モデルによる予測、推奨、自動化のツールという「オートパイロット」の段階から、あらゆることのやり方を抜本的に変革する、途方もないチャンスを秘めた「コパイロット」の段階へと移行しつつある。いまAIを受け入れ、理解するために行動を起こし、AIを試し、AIがどのように難しい問題を解決するかを思い描くリーダーは、AIの世界で繁栄する企業を営むことになるだろう。
だが、どこから着手したらよいのだろうか。筆者はほぼ毎日のように、ビジネスリーダーからAIの潜在能力について重要な質問を受ける。現在、AI活用に向けた道のりのどの段階にいるとしても、またとない機会を受け入れて、この強力なテクノロジーを活用することは、すべてのリーダーの義務である。
どのように着手すればよいのか、あるいはどのように進めればよいのか、自信がないという人もいるだろう。それは、あなただけではない。ほかのビジネスプランニングの訓練と同様、AI戦略を段階ごとに考えてみてほしい。アジリティと変化を受け入れ、継続学習のマインドセットを維持し、前進しながらゲームプランを修正し調整しよう。
まず試してみる
AIを学ぶ最善の方法は、実際に使ってみることである。新しく破壊的なテクノロジーがすぐさま利用しやすくなることは、めったにない。だが、AIは例外である。筆者が話したリーダーの大半は、チャットGPTや新しいBingのような一般に浸透したAIアプリケーションを試していた。ほかにも多くのアプリケーションが出回っているが、大切なのは好奇心を持つことである。
何であれ目の前のタスクにAIを適用し、何が得意で何が不得意かを見極めよう。たとえばAIを使ってインタビューの質問を生成したり、メモを取ったり、深く知りたいテーマについてリサーチし要約したり、文書作成のための思考の起点となるものを入手したりするのである。
筆者はスピーチのアイデアを得るために、BingとチャットGPTを使用した。また、マイクロソフトのアプリケーションを統合したAIである「マイクロソフト365コパイロット」を使用して、スライドを作成したり、共通のテーマの文書を見つけ出して要約したり、同僚とのメールのやり取りの要点をまとめたりしたこともある。AIを実際に使用して試してみれば、組織での活用方法を想像しやすくなる。そして、どこにチャンスと可能性が潜んでいるのか、誰よりもよくわかるようになるだろう。
生産性を上げるために使う
生産性に関しては、AIコパイロット(マイクロソフトや他社のもの)を搭載するか、アプリケーションに埋め込むことによって、ある種のタスクを補助したり簡略化したりすることができる。
GitHubのコパイロットはリリースから2年も経たないうちに、すでにレポジトリのコードの46%を書き終え、開発者のコーディングを最大55%高速化している。これにより新たに生じた時間に、開発者が何をしているかを想像してほしい。ユーザーの4人中3人は、AIコパイロットによって精神的エネルギーが温存され、さらに満足感のある仕事に集中できると答えている。その仕事とは、新しいものを創造し、新たな問題を解決する仕事である。
あなたのビジネスのワークフローやプロセス駆動型の活動を検討してみよう。たとえば給与支払、新人研修、ITのヘルプデスクサポートなどである。これらはすべて反復可能で、ルールに基づくプロセスであり、AIによって効率化できる。このことは、手作業に取って代わり、多くのビジネスプロセスを再形成する、まったく新しいカテゴリーのAIソフトウェアの発展を後押ししている。
AIの生産性は、もう一つの側面からも考えられる。それはすなわち時間である。不正検知の担当者やセキュリティのアナリストにとって、時間は最大の資産であり、最大の課題でもある。もし時間的な制約がある中、大量の情報を隅々までチェックする作業を短縮できたら、あなたはいままで以上に首尾よく効率的に仕事をこなすことができる。