営業が失敗に終わった時、自問すべきことは何か
Illustration by Daniel Creel
サマリー:営業活動における振り返りの効果は大きい。成功と失敗の分析は、チームの将来の成功につながっているからだ。短い時間でも、商品やサービスの価格や特徴に加え、微妙な要因にも注意を払いながら振り返ることが重要で... もっと見るある。本稿では、営業活動に関する振り返りの論点を明確にする3つの質問を紹介する。 閉じる

10分間の振り返りでも大きなメリットが得られる

「今回はお断りすることになりました」というメールを読んだ時、ブレントはみぞおちにパンチを食らった気がした。彼は敗北を飲み込もうとするかのように頭を垂れた。

 フィンテック企業のアカウントエグゼクティブであるブレントは、この取引はまもなく成立すると確信していた。そのため四半期末の予測に入れていたし、肩入れしていた。だが、取引の不成立という現実と向き合った時、クライアントがあまり乗り気ではないことを示すサインがいくつかあったことに気づいた。結局、クライアントは他社を利用することになった。

 上司に報告しなければならないことはわかっていた。だが最もやりたくないのは、会議の時間を自分の失敗の分析に費やすことだった。上司に報告する前に別の取引をつくり上げ、ごまかせば、苦痛になる話し合いを避けられるかもしれない。

 営業担当者は取引が不成立に終わった時、たいてい、失敗の詳細にこだわるよりは次に進むことを好む。同様に、取引が成立すると、ほとんどの人はすぐに祝杯をあげて喜び、成功の理由を分析する時間を取る人は、ごく少数だ。

 営業チームの指導とコーチングに携わってきた筆者らは、取引の成功と失敗の背後にある理由を分析するために、簡潔でポイントを絞った営業活動の振り返りを行うことが、チームの将来の成功率を著しく高めるというエビデンスを目の当たりにしてきた。

 成功と失敗の分析は、営業チームにとって今後使用すべき最適なメッセージや行動を突き止めるという明白なメリットがある。それだけではなく、商品開発やマーケティング、財務のチームにも貴重な知見をもたらす。

 リーダーや売り手の課題は、価格と商品の特徴について、従来の競合分析を掘り下げて、顧客の購買の決定に関与した微妙な要因を明らかにすることである。営業担当者は、特にまだ痛みが残る失敗の場合、過ぎ去ったことをわざわざ大きく取り上げて分析されると思うと、うめき声を上げたくなるかもしれない。だが、たった10分間の振り返りだけでも大きなメリットが得られるだろう。

 以下の3つは、組織や個人が営業の振り返りをする際に使える質問である。チームが取引に成功した場合にも失敗した場合にも有効だ。顧客に購入の決断を促した本当の論点を、チームが理解できるように設計されている。

顧客はみずからの選択の価値をどのように表現しているか

 リーダーは、取引が成立あるいは失敗した後で、この質問をチームに投げかけるとよい。まず、チームにソリューションそのものの枠を超えて考えるように求めよう。むしろ、自社のものであれ競合相手のものであれ、顧客が自身の選んだソリューションの効果について、どのように表現しているかに注目する。たとえば、そのソリューションは、営業が話を持ちかけている当初のユーザーグループを超えて、他の部署に影響を与えるのかもしれないし、顧客が社内のほかの優先事項を達成するのに役立つのかもしれない。目に見えるユーザーの背後に目を向けると、より大きな影響力が理解できる。

 取引が不成立に終わった場合、こうした視点で深く掘り下げることは、みずからのポジショニングを整え、次の機会により切迫感を高めるのに役立つ。取引が成立した場合も、こうした情報によって、クライアントから見て価値の高い取引を確実に実行するための対策を打つことができる。

 先のフィンテック企業の例では、営業活動を振り返った時、顧客は商品の2〜3の特徴を重視していたことが明らかになった。その特徴は、顧客の社内では不可欠とされていた。顧客は競合相手の商品のほうが、この面でより手堅いと考えていたのだ。振り返りの中で具体的になったことにより、ブレントの会社の商品開発チームは、競合相手と張り合えるよう、商品を微調整した。マーケティングチームも、変化を強調するために資料のどこを修正すればよいかという情報を収集できた。

 失敗の分析は概して、チャンスの発見に役立つ。しかし、成功を分析することにもメリットがある。顧客がそのソリューションの価値をどのように表現していたかを営業担当者から聞くことで、チーム全体で勝利を共有することができる。特に逼迫した経済状況では、失敗だけを分析するのではなく、成功にも注目することで、顧客が自社の提供するソリューションに価値を見出していること、そのため、いまなお多くの顧客がそれを購入していることを営業チームは思い出せる。