人生後半でキャリアチェンジを成功させるコツ
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サマリー:年齢を重ねてからのキャリアチェンジは難しい。一定の報酬や職位、肩書きを維持する必要があるし、競争相手はあなたよりも若く、仕事をこなせる「十分な経験」があるからだ。そこで本稿では、仕事人生の後半で、それ... もっと見るまでとは異なる職種や業界へのキャリアチェンジを考えている人に向けて、面接の時、若い競争相手に差をつける方法をいくつか紹介する。 閉じる

仕事人生の後半におけるキャリアチェンジは怖い

 キャリアチェンジは難しい。これまでの経験が一つの職種や業界に偏っている場合は、なおさらだ。定年まで10~20年という段階でのキャリアチェンジは、さらに難しいかもしれない。一定の報酬や職位、肩書きを維持する必要があるし、競争相手はあなたよりも若く、仕事をこなせる「十分な経験」があるからだ。

 筆者は33歳の時、テレビニュースの記者からエンタテインメント分野専門の弁護士へと転身を図った。その時の就職活動では、それまでの10年間の職務経験がまったく評価されないのではないかと、とても怖かったのを覚えている。さらに48歳の時、弁護士からテクノロジー業界の人事ビジネスパートナー(HRBP)へとキャリアチェンジを図った。この時も前回と同じ恐怖を抱いたが、そのレベルは何十倍も大きかった。

 もし仕事人生の後半で、それまでとは異なる職種や業界へのキャリアチェンジを考えているなら、面接の時に役立つ、あなたよりも若い競争相手に差をつける方法をいくつか紹介しよう。

熟練するのに長い歳月を要する仕事をアピールする

 職場での熟練とは、仕事の「内容」だけでなく、「やり方」においても優れていることを意味する。あなたのキャリアにおける功績や進歩に貢献した個人的なスキルと、対人関係のスキル、そしてソフトスキルをアピールしよう。

 頼りになる、時間を守る、献身的といった個人的なスキルは、あなたの総合的な労働倫理と、職務遂行に傾けるエネルギーを物語る。ソフトスキルも重要だ。これは、仕事をするうえでの主体性や、どの職位でも仕事ができること、そして自分の仕事が会社の大きな目標にどう貢献しているか理解する能力などだ。たとえば、CEOなどの経営幹部にプレゼンをしたり、彼らと一緒に仕事をしたりした経験があるなら、それを強調してエグゼクティブとしての存在感があることや、優れたコミュニケーション能力、格上のリーダーとも臆することなく仕事ができることをアピールしよう。

 対人関係のスキルは、企業において極めて重要になる。部門横断的なチームとのパートナーシップ、他者との問題解決、変化の時にステークホルダーと足並みを揃えたり管理したりすること、そして正式な権限がなくても影響を与える方法などは、どのような仕事でも重宝されるスキルだ。

 ただ、あなたが目指すべきなのは、これらのスキルを、より高いレベルのビジネスの才覚と組み合わせて示すことである。それは、意思決定がもたらす幅広い影響を理解する能力を示す事例を挙げたり、質問に回答する時に収益性を重視する姿勢を示したりすることかもしれない。複雑な仕事において対人関係スキルに長けている事例を示せば、そうした経験を得る時間やチャンスがまだ少ない若手との差別化を図れるだろう。

どのように価値をもたらすかを示す

 たとえ目指している分野で仕事をした経験がなくても、あなたは熟練ワーカーとして、その分野に応用できるスキルや経験を数多く持っている可能性が高い。多くの企業がコスト削減のために、ポジションを統合して、より少ない労力でより多くの仕事をこなすことを従業員に期待している。そんな時代に、あなたのスキルの汎用性を示せば、採用担当者があなたをトップ候補と見なす助けになるだろう。

 たとえば、これまではずっと財務の仕事をしてきたが、今度は事業運営をやりたいと思っているとしよう。あなたが持つ、財務の細かな経験、損益バランス、償却などに関する深い理解は、財務に直接関わった経験がない若手よりもあなたを魅力的な候補にする可能性が高い。

「……をした時のことを話してください」という質問をされたら、オペレーション面での経験を語るだけでなく、財務のバックグラウンドが問題を解決したり、誰かの意見に影響を与えたり、ステークホルダーの同意を取りつけるカギになったりしたことなどを説明しよう。さまざまな点と点を結びつけて、あなたの幅広いスキルのほうが、求人票に記載された必須スキルだけしかない候補者や、職務経験が限定的な候補者よりも価値が高いことを面接官に示そう。

スキルアップし続けていることを示す

 自分のスキルを伸ばし続ければ、あなたには学び続けるエネルギーがあり、定年まで惰性で過ごしているわけではないことを示せる。より若い候補者と差別化するために、自分のスキルや知識をどのように伸ばしてきたかを、新しいキャリアに関連する具体的な形で説明しよう。

 そして、その業界の最下位から最上位までの求人情報を見て、その業界で一般に使われているデジタルツールやアプリに慣れておこう。求人票には、「Xを十分使いこなせること」とか「Yなど複数のテクノロジーを使いこなした経験があること」といった記述があるはずだ。こうしたアプリケーションが、その分野ではどのように使われているか調べるとよい。

 また、AI(人工知能)や機械学習が新しいキャリアにどのような影響を与える可能性があるか、たとえ比較的近い将来に退職するつもりでも、一定の時間をかけて理解しよう。「AIがマーケティングに与える影響」や「財務におけるAIのインパクト」などの簡単な検索をかけて、AIがあなたの希望する分野で現在使われているか、将来使われる可能性があるか調べよう。新しいテクノロジーや、それらが仕事のやり方をどう変えるかについて話ができれば、知識を未来の戦略に関する会話に応用する分析スキルがない若手候補よりも、あなたの位置付けを高めることができるだろう。