「でも、これはやったことがないですよね」という質問に備える
こう質問されたら、けっして認めてはいけない。求人票に書かれていたキーワードを駆使して、あなたのスキルとあなたが応募している仕事を結びつけよう。
筆者が、エンタテインメント業界専門の弁護士から人事ビジネスパートナーへ、そしてエグゼクティブコーチへとキャリアチェンジをした時、毎回面接でこの質問をされた。そこで、新しいキャリアで成功するためのスキルと能力があると納得してもらうために、筆者が言ったことを紹介しよう。太字は求人票にあったキーワードだ。
「HRビジネスパートナーの役割は、会社の目標を達成するために従業員のスキルと能力を一致させることです。これは私がリアリティ番組でずっとやってきたことと同じです。つまり、クリエイティブエグゼクティブやプロデューサーが、適切なスキルを持つ強力なキャストを確保するのを戦略的に支援して、ビジネスを牽引する優れた番組をつくり上げました。また、これといった対処策が決まっておらず、卓越した判断力が求められる人材関連の問題について、プロデューサーのコーチングも担当しています。これはまさに、HRビジネスパートナーが会社でやっていることです。私はそれをテレビのセットでやっているのです」
筆者は、クライアントがキャリアチェンジをする時にも、この質問に答える準備を手伝っている。たとえば、英語教師のジャネットは、「あなたは教師なのですか、それともプログラムマネジャーなのですか」と聞かれた時、こう答えた。
「両方です。私は英語教師ですが、仕事を遂行するには、事業目標を達成するためのプログラムを準備する並外れたプログラムマネジャーである必要があります。私の業界での事業目標とは、学区全体で生徒と教員両方のパフォーマンスを高めることです。私は教育者というよりプログラムマネジャーであり、プログラムマネジメントの資格を取得して、長期計画や、複数のプロジェクト間の相互依存関係の調整、学区内の複数の学校や指導者間のプログラム関連のコミュニケーション促進といった分野で、より多くのツールやベストプラクティスを学ぶことができました。ですから、企業の場でもプログラマネジャーとして最大の価値をもたらせると信じています。より企業的な環境に、これらのスキルと能力を持ち込むわけです」
幅広いネットワークを活用、アピールする
社会人になって20~30年も経っているなら、現在エグゼクティブや取締役、管理職を務める人たちと仕事をした経験がある可能性が高い。彼らはあなたの能力に太鼓判を押せる立場にある。こうした人脈を活用して求人情報を入手したり(未公開のものもあるかもしれない)、その人脈からリクルーターや採用担当者を紹介してもらえるか聞いてみたりしよう。
また、職種によっては、幅広い人的ネットワークがあなたを魅力的な候補者にするだろう。経験の浅い候補者にないことが多いからだ。たとえば、営業や事業開発の仕事で得た顧客や人脈が、あなたのリーチや影響力、アクセスを拡大して、次の会社にもプラスになるかもしれない。それは、顧客リストや深い人間関係を持たない経験の浅い候補よりも、あなたが貴重な人材であることを認識してもらう助けになるだろう。
* * *
年齢を重ねてからのキャリアチェンジは、大変かもしれない。不確実性の高い現代ではなおさらだ。しかし、あなたはすでに採用候補者として自分を差別化するものを持っている。あなたはただ、そのユニークなスキルや経験、視点が、チームや組織を前進させる助けになることを採用担当者や面接官が理解できるように、少しばかり特別な準備をすればよいだけだ。
"How to Make a Pivot in the Latter Half of Your Career," HBR.org, August 03, 2023.