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新型コロナで変わったマーケティングチャネル
新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、企業は新たな顧客の要求に対し、迅速な適応と対応を迫られた。この力学が最も顕著に表れた手法の一つが、企業が顧客と関わり、顧客に販売するために採用しているマーケティングチャネルだ。
では、何が変わったのだろうか。最新のザ・CMOサーベイは、米国の314人のマーケティングリーダーから学んだ5つの主要なトレンドを明らかにしている。さらに、マーケターがこれらのトレンドを業務で活用するために役立つ分析と提言も行っている。
チャネルは拡大している
調査では、3分の2近く(61%)の企業が、利用するチャネルの数が増えていると回答している。これにはB2B企業もB2C企業も含まれているが、なかでもB2Cサービス企業が77%の増加率でトップだった。
チャネルを拡大する利点の一つは、消費者が企業と対話する方法を選べるようになったことだ。ただし、チャネルの拡大には多大な努力と投資が必要である。この戦略に飛びつく前に、マーケティングチームは以下の点を検討する必要がある。
・新しいチャネルは新規顧客をそのカテゴリーに引き込んだり、既存顧客を競合他社から奪ったり、既存顧客のシェアを高めたりするのか。
・チャネルの数が増えることは、ブランドと顧客体験の観点から整合性があるか。
・複数のタッチポイント(接点)が同じメリットやブランドイメージを与えているか。
・チャネルはシームレスにつながっているか。
・顧客は、異なるチャネルを利用することで得られる価値や、チャネル間を簡単に移動する方法を理解しているか。
対面式(F2F)のチャネルは健在である
対面式(F2F)のチャネルを完全にデジタル化したと回答した企業は、わずか6.7%だった。つまり、大半の企業が対面式のチャネルを維持している。さらに、28%の企業が新たな対面式のチャネルを開設している。
企業や市場のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を考えた時、対面式のチャネルはさらに減少すると見られていた。このチャネルが存続している理由は3つある。
第1に、消費者は毎日5000~1万件の広告にさらされている。このようにごちゃごちゃしたデジタル広告は目に留まりにくいため、対面式のチャネルを維持することによって、マーケターは消費者にリーチし、突破口を開くためのさまざまな方法を提供できる可能性がある。
第2に、消費者は、平均的な1日に使用するアプリの数やスクリーンを介したインタラクションの数が多いことから、デジタル疲労を感じている。これらの数はパンデミック中に2倍以上に増えている。その結果、多くの人が、疲れ果ててしまうようなデジタル生活の中で、人間的な交流を切望していることだろう。消費者はまた、この3年間のリスクと不確実性に対する自然な反応として、より信頼性を求めている。
第3に、多くの企業が実店舗などの対面式のチャネルを、消費者行動を学ぶ実験室ととらえている。IoT(モノのインターネット)に接続された商品や顧客分析など、先進的なテクノロジーを活用して、顧客が何を求め、移動中にどのような行動を取るのか、より深く学ぼうとしているのだ。
一方で、筆者らのサンプルから、さまざまな業界について対面式のチャネルが必要かどうかを判断するのに役立ちそうな違いがいくつか観察された。たとえば、製品企業では、完全なデジタル化への動きがサービス企業(22%)に比べて鈍く、新しい対面式のチャネルを開設する傾向(31%)がより強い。対面式のチャネルを開設していないのは、純粋なインターネット企業だけだ。新しい対面式のチャネルは、不動産、小売り、コミュニケーション/メディア部門が最も多く、ヘルスケア、製薬/バイオテクノロジー、テクノロジー部門は最も少ない。
ブランドのソーシャルメディアの活用は拡大している
いまや半数近くの企業(45%)が製品やサービスの販売にソーシャルチャネルを利用しており、B2Cサービス企業では61.5%に上る。この分野では不動産企業(100%)、通信/メディア企業(82%)、小売/卸売企業(70%)が特に多い。
スナップチャット、フェイスブック、インスタグラムなどのソーシャルメディア企業は、パンデミックの1年目にeコマースの売上げが過去最高に達した。インスタグラムが2020年にアプリ内で閲覧から購入、支払いまで完結するチェックアウト機能の提供を始めたことにより、ソーシャルメディアのフィードをスクロールしている12億人以上のユーザーにリーチする道が開かれ、このプロセスが加速したともいえる。
さらに、ソーシャルメッセージの手軽さのおかげで、マーケターは顧客とリアルタイムに関わり、質問に答えることができる。2022年には米国の成人の半数以上が、ソーシャルメディアのチャネルを通じて何かしらを購入した。スプラウト・ソーシャルの調査では、98%の人が今後このチャネルを使って購入するだろうと答えている。
たとえば、掃除用スポンジ「スクラブダディ」はティックトックで生意気なキャラクターを定着させ、新進気鋭のインフルエンサーたちとコラボした。その結果、数十億回の閲覧回数、数百万人のフォロワーを獲得し、オンラインの売上げを大きく伸ばした。
ソーシャルメディア上のブランドと聞けば、B2Cブランドをイメージする人が多いだろう。実際、そうした企業は、B2Bブランド(37%)に比べて、ソーシャルチャネルで製品やサービスを販売する傾向が高い(58%)。とはいえ、この世界にもB2B企業の可能性がある。
デンマークの海運大手APモラー・マースクは、10年以上前、ブランドの評判を高めるためにソーシャルメディアのキャンペーンを立ち上げた。経営陣が驚いたことに、フェイスブックのフォロワー85万人のうち、22%が実際の顧客でもあった(しかもマークスは当時、海運サービスをオンライン上で展開していなかった)。フィードバックとフォローアップ営業のためにこのチャネルを活用することは、同社にとって当然のステップだった。
同様にB2Bのマーケターの89%が、見込み客を創出するためにリンクトインを利用している。これらの数字は勇気づけられるものであり、ソーシャルメディアに精通した若い消費者が管理職に就くようになれば、さらに増えると見られる。