ハイブリッドな働き方が職場に有害である理由
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サマリー:職場に害を及ぼす問題は、どこでどのように仕事をしようとも起こりうるが、ハイブリッドワークやリモートワークには従業員の有害な言動をより生じやすくする側面がある。本稿では、ハイブリッドな働き方が有害性を高... もっと見るめる4つのメカニズムを解説したうえで、リーダーが有害な行動に対処するための4つの方法を紹介する。 閉じる

有害な組織文化を示す「5つの属性」

 どこで、どのように仕事をしようとも、職場における有害性はさまざまな要因によって引き起こされる。重要なのは、有害な言動をより生じやすくする側面がハイブリッドワークやリモートワークにあると認識することだ。

 まずは「有害」が意味するものについて簡単に解説しよう。健全な組織では誤解や緊張、対立が生じるのは自然なこと(そして必要なこと)であり、そうしたものを有害と呼ぶわけではない。また、一回限りのハプニングや、どのような職場にもたまにいる嫌な同僚を指すわけでもない。その手のいら立ちは往々にして、職業人生には付き物だと思っておくほうがよい。

 では、実際に「有害」と見なされるのはどのようなことか。マサチューセッツ工科大学(MIT)スーロンスクール・オブ・マネジメント上級講師のドナルド・サルとその同僚らの研究によって、有害な文化には「無礼、非包括的、非倫理的、冷酷、虐待的」の5つの属性があると特定されている。

 筆者が先日、この問題の専門家である2人の同僚(ハーバード・ビジネス・スクール<HBS>教授のエイミー C. エドモンドソンとボストン大学クエストロムスクール・オブ・ビジネス講師のコンスタンス・ヌーナン・ハドリー)と行った議論では、有害な行動とは広く行われ、現在も続いている行動を示唆するという点で意見が一致した。そして、それこそが悪い行動を有害なレベルまで引き上げる、あるいは引き下げる要因だと確信している。

 有害性には逃れようがないという感覚がつきまとい、そのせいもあって、職場で有害な言動にさらされるのは極めてつらいものになる。

 有害性にまつわる属性がネガティブなものであることは間違いないが、どの属性についても、それを測定できるような絶対的かつ統一の尺度は存在しない。5つの属性はすべて、各自の経験に根差した主観的なものである。

 さらにややこしいことに、ハイブリッド環境ではその言葉通り、社員は対面やリモートなどばらばらのコンテクストで働いており、しかも、日によって状況が異なる場合もある。つまり、ハイブリッドな職場環境とは統一的なものとはほど遠く、そこでの経験に有害さを感じる人もいれば、そうでない人もいる。だからといって、ハイブリッド環境で有害な経験をした人の苦痛やダメージが小さくなるわけではないが、善意に基づく行動──少なくとも悪意のない行動──だったとしても、それが有害である可能性は否定できない。

 筆者が有害性の問題についてエグゼクティブと話す際には、社会科学者のように思考し、ハイブリッドな働き方が有害性を高めるメカニズムを理解するよう勧めている。そのために知っておくべきことを以下で紹介しよう。

ハイブリッドワークが有害性につながるメカニズム

 筆者は研究とコンサルティングの経験を通して、ハイブリッドワークが有害な行動につながる4つのメカニズムを以下のように考えるに至った。

1. リモートがダイナミクスを変える

 常にオフィスに出勤して働く場合と比べて、ハイブリッドワークではメールや電話、ビデオなどのテクノロジーを使ったコミュニケーションが増加する。それに関する研究の初期の発見として、テクノロジーを介したコミュニケーションでは抑制が利きにくくなり、自己監視や自制心が弱くなることが明らかになった。つまり、電子的なコミュニケーションでは、相手を傷つける可能性のある内容を口にしてしまう傾向が高まるのだ。対面とメールでそれぞれ、同僚と激しいやり取りをした場面を思い浮かべてみよう。対面よりもメールのほうがずっと、きつい言葉を使いたい誘惑に駆られたのではないだろうか。

 そう感じたのは、あなたが意地悪な人間だから、というわけでは(必ずしも)ない。怒りやいら立ち、あるいは情熱に駆られる瞬間は誰にでもあり、そうした感情は、扱いを間違えれば有害なものに変わりかねない。

 ただし、対面のやり取りでは、相手側の存在感がはるかに際立っているため、たいていの人は不用意な発言がもたらす潜在的な代償に気づいて言葉を飲み込むものだ。ポイントは、自分の気持ちを口にすべきでないということではなく(もしも口にできないと感じるなら、心理的安全性が損なわれている)、言葉をよく選ぶべきということだ。リモートでのやり取りに伴う自己監視や自制心の低下が必ずしも有害性を生み出すとは限らないが、「無礼」で「虐待的」な発言(サルが挙げた有害性の特性のうちの2つ)につながりやすいのは確かだ。