リーダーにできること
筆者は、ハイブリッドワークにおける有害な行動に対して、「教育する」「土台を築く」「継続的な対話を持つ」「迅速に介入する」の4つの方法でアプローチするよう、リーダーにアドバイスしている。
従業員を教育する
ハイブリッドチームにおける有害行動を回避する第一歩は、有害行動が起こる仕組みを従業員が学べるようサポートをすることだ。「無礼で虐待的、非包括的な態度を取るべきでないことくらい、当然わかっているはずだ」と思うだろうが、問題はそこではない。社員とひざを突き合わせ、ハイブリッドな働き方に関する取り決めや決定が意図せぬ形でもたらす影響について話し合おう。そして、行動が有害かどうかが問題であり、重要なのは「あなたがどういうつもりだったか」ではなく、「あなたの行動を他人がどう受け止めたか」だという点を伝えるべきだ。
手始めに、ハイブリッドワークの際に有害だと感じた行動(ソーシャルグループから日常的に排除されていると感じる、スラックで虐待的で無礼と感じるコメントを目にしたなど)について振り返らせるといい。このステップの目的は、問題を特定したり、誰かを糾弾したりすることではなく、従業員の自己認識を高め、有害行動やその前兆を見つけられる目を増やすことにある。
土台を築く
「1オンスの予防は1ポンドの治療に値する」というベンジャミン・フランクリンの有名な言葉があるように、最も効果的なツールの一つは、有害行動への「抗体」を備えた企業文化を構築することだ。特に、共感と心理的安全性の促進に力を入れよう。企業文化に共感という核があれば、自分の行動が同僚に与える影響を考えるよう従業員に促し、周囲から問題視される行動を取る前に自分で課題に気づける可能性が高まる。
一方、心理的安全性を伴う文化は、共感では防げないトラブルの際に重要な役割を果たす。人は自身の行動の影響を常に認識できるわけではないが、心理的安全性が確立されていれば、有害と感じる行動について従業員が声を上げられる。共感と心理的安全性の両方を促進する優れた実践的アドバイスも、研究によって提供されている。
継続的な対話を持つ
ハイブリッドワークでの経験は一人ひとりの従業員ごとに異なり、また時間とともに変化するため(今日はオフィスで同僚に囲まれていても、明日は自宅で一人かもしれない)、有害性の対象も変化し続ける。そうしたダイナミズムを管理するに当たって唯一効果的なのは継続的なプロセスであり、その土台となるのは、繰り返し行われる継続的な対話だ。
筆者がハイブリッドのチームや組織に推奨するのは、定期的なチェックインの場を設け、全員が懸念点を伝え合ったり、有害な経験について話し合ったりできるよう促すことである。頻度については厳密なルールはなく、組織のハイブリッド環境がどれほどダイナミックかによって異なる。変化が大きいほど、また変化のスピードが速いほど、より頻繁に対話の場を持つべきだ。まずは毎月1回のチェックインを目標とし、状況に応じて調整しよう。従業員に率直に対話してほしいなら、心理的安全性の基盤を整え、また、そうした対話を表面的な流れ作業以上のものとして扱う必要がある。
迅速に介入する
課題を理解し、ポジティブな企業文化の土台を整え、継続的な対話を続けていたとしても、ハイブリッドワークによって従業員が有害と感じる行動が引き起こされるケースはありうる。有害な環境に伴う大きな問題として、有害性が一段と加速しやすいという点がある。有害行動そのものが糧となって、有害性がさらに高まる場合もあれば、不満を感じた従業員が退職することで仕事の再配分が必要となり、新たな緊張が生じる場合もある。この連鎖を断ち切るには、有害行動に目を光らせるだけでなく、有害行動を見つけた場合に迅速に対応し、すべての関係者が対話に参加できるよう支援し、互いに受け入れ可能な解決策を導き出せるよう体制を整えておく必要がある。
たとえば、在宅勤務の日をめぐってチームが分裂してしまったマネジャーがいることに気づいたとしよう。そうしたケースでは、あなたがチームミーティングを招集して、この状況が排他的と感じられかねないという懸念を共有しよう。他の人はそうした懸念を感じていないと判明する可能性もあるが、それでも問題への関心と主体性を生み出すことはでき、後に懸念が現実になった時にも対処しやすくなる。ただし、チームメンバーの間に懸念が芽生えていることに気づいているのなら、問題が大きくなる前に話し合いを持ち、集団で解決すべきだ。
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有毒な職場環境が存在するのは、残念ながら事実である。ハイブリッドワークが対面での働き方以上に有害行動につながりやすいとは限らないが、ハイブリッドワークには有害性を誘発する独自のメカニズムがあることは認識しておくべきだ。リーダーがその点を念頭に置いていれば、有害行動が発生した時──理想的には発生する前に──有害性に気づき、防御し、それを排除できるに違いない。