藤田 単にスマホセントリックに移行するだけじゃなく、お客様にとっての新しい体験、新しい“当たり前”をつくりたいと思っています。
かつては新聞で前日の株価を確認するしかありませんでしたが、インターネットの発達でリアルタイムの値動きを誰でも知ることができるようになりましたし、投資に関連するさまざまな情報を入手できます。個人投資家と証券会社の情報の非対称性はなくなり、いまでは個人のほうが多くの情報を持っているほどです。
ただ、ネットには裏付けや信頼性に乏しい情報があふれています。ネット証券を含む金融機関に求められるのは、お客様が必要とする情報を選別し、確度の高いものを提供することに尽きると思います。

Takashi Fujita
auカブコム証券 代表取締役副社長
対面証券では、有能な営業担当者がお客様とコミュニケーションしながら、それをやってきたわけです。ネット証券でも、デジタル技術とビッグデータを使えば、同じことができるというのが僕の仮説で、それができないとこれからのネット証券は存在意義がなくなると思っています。
対面証券にできて、ネット証券にできていないこと
髙栁 御社にも活用いただいている「KARTE」という当社のプロダクトは2015年にリリースしたのですが、発想の原点には人間同士のリアルなコミュニケーションをオンラインで実現したいという思いがありました。そのため、リアルタイムにデータを解析して即座にレスポンスを返すことにこだわっています。
本当の意味でのデジタル・トランスフォーメーションの浸透は、藤田さんがおっしゃったように、オフラインでの素晴らしい体験をオンラインでも違和感なく実現できてこそ成しうると思っています。
藤田 対面証券と同じように価値ある情報や体験を、オンラインでどうやったら提供できるのかを考えると、違いはインタラクティブ(相互作用)性だと思うんです。対面だとこちらが話したことに対してリアクションがあったり、ちょっと考える間があったり、そうしたインタラクティブなコミュニケーションを重ねていくことで、お互いの理解が深まります。
現時点で、ネット証券にそこまでのインタラクティブ性はありません。しかし、データが蓄積されてくると、お客様の金融知識や心理状況などを理解して、より速く、的確なレスポンスを返すことができるようになり、オフラインの体験価値をネットで再現できるようになると思いますし、KARTEだったらそれができるんじゃないかと期待しています。
髙栁 ありがとうございます。KARTEならそれを実現できると自負しています。
言葉を換えて言えば、対面証券の体験価値って“気が利く”部分にあるのかなと思います。僕が営業マンだとして、藤田さんとの対話の中で、どういう投資方針なのか、お好きな銘柄は何かといったことを知っていれば気が利いた提案ができて、それが顧客満足度につながって、エンゲージメントが高まっていく。そういう気が利く体験をデジタルの世界で実現したいということですよね。

Keitaro Takayanagi
プレイド
取締役
藤田 そうなんです。
髙栁 ポイントとなるのは、やはりお客様のことをよく知っているということで、それはどんな業種、業態でも大きなアドバンテージになります。
藤田 オンラインでの体験価値を上げることで、ネット証券の特性がより活きてくる面もあります。対面証券の営業担当者が足しげく通ってくれると、特に投資初心者はその提案を断りづらいことがあります。ネット証券であればその心配はなく、気の利いた提案であっても、受け入れるかどうかの選択権は100%お客様の側にあります。