
営業担当者の役割は複雑すぎる
営業部門のリーダーは、たえず変化する顧客ニーズに営業担当者が対応できるようにするため、「あと一つ」の戦略を長年にわたり推進してきた。あと一つ取引を成立させるために、あと一つスキルを習得して、あと一つテクノロジーをマスターして、あと一つツールを導入するよう、営業担当者に求めてきたのだ。
その過程で、営業リーダーは善意ながら、ほとんどの営業担当者に対して複雑すぎる役割を与えてきた。ガートナーが最近、B2Bの営業担当者501人を対象に行った調査では、自分に割り当てられたタスクをすべて遂行し、かつ高い品質を求める会社の基準を満たしている自信があると回答した担当者は、わずか25%だった。
このような時に営業リーダーが解決策として考えるのは、テクノロジーだ。しかし、営業担当者のおよそ半分は、業務に必要なテクノロジーの数に圧倒されている。これを単なる悩みとして片づけることはできない。収益目標を達成できるかどうかの分かれ目になるからだ。筆者たちの調査によると、テクノロジーに圧倒されていると感じている営業担当者は、そう感じていない担当者に比べて、ノルマを達成する可能性が43%低いことがわかっている。
少ない要求で営業担当者が多くを達成できるようにする
営業リーダーは、中核となるパフォーマーがみずから管理できることを中心に据えて、営業担当者の役割を再構築しなければならない。これからの営業担当者に対しては、スキルや責任、タスクの要求を減らしつつ、より多くを達成できるよう促すべきだ。
そこで、営業担当者のための機能するテクノロジー戦略が必要になる。成功する営業チームは、テクノロジーを単なる道具としてではなく、チームメートとして扱い、営業担当者の役割を刷新する。これにより担当者は「メンタライジング」と「バリュー・アファメーション」という2つの概念を通じて、買い手の意思決定の心理的・感情的側面を解明するという人間ならではの能力に注力できる。
テクノロジーをチームメートとして扱う
テクノロジーは長年にわたり、営業担当者の生産性を向上させるために使われてきた。一方で営業リーダーたちは、効率性の向上は以前より時間もコストもかかるようになったと語っている。その理由は、販売支援を目的としたテクノロジーが、往々にして営業担当者の仕事を面倒なものにするからだ。営業組織のほとんどの業務は、営業担当者を通じて行うことが多くなりがちで、支援のための複雑なシステムの数が増えている。
営業担当者から見れば、テクノロジーが増えたからといって、仕事が楽になるわけでも対応範囲が狭くなるわけでもない。学ばなければならないことが増えるだけだ。
AI(人工知能)の進歩は新しいアプローチを可能にするが、それは営業リーダーがテクノロジーの導入について従来とは異なる考え方をする場合に限られる。今後、先進的な営業組織は、テクノロジーを営業チームの一人前のメンバーとして扱い、営業担当者は一部の業務から解放されるだろう。より多くのテクノロジーを担当者に与えるのではなく、テクノロジー自体がより多くの責任を負って、購買環境を自律的にナビゲートするようになる。
ここに収益のテクノロジー革命がある。ガートナーはセールステクノロジーの成熟度を下の図表のように4段階に分類している。
ステージ1と2では、人間が意思決定を行い、機械のサポートを受けながらタスクを実行する。この時テクノロジーとツールの複雑な網の中心には、引き続き人間の担当者がいる。ステージ3と4では、機械が人間のガイダンスの下で意思決定をしてタスクを実行し、営業担当者の負担を軽減する形で責任を分担する。
完全に自律した営業(ステージ4)が複雑なB2B営業の標準になることは考えにくいが、多くの組織は現在、営業支援(ステージ2)の段階で足踏みしている。営業の自動化(ステージ3)を目指し、テクノロジーをチームメートとして受け入れる営業組織は、競争優位を獲得して、営業の生産性について測定可能な段階的変化を経験できるだろう。