価値の高いユースケースに注力して営業担当者を解放する
テクノロジーをチームメートとして活用する機会は膨大にある。営業リーダーはどこから始めればよいだろうか。
成功している組織は、すぐに影響が出ることが見込めて、営業担当者が歓迎するユースケースを徹底して優先させる。ガートナーの調査によると、次のようなユースケースがその目的に適っている。
・営業担当者の役割の簡潔化:営業担当者にとって必要不可欠だが、「管理的」(顧客管理システムの更新など)または「価値が低い」(データ収集など)と見なしている業務を自動化することにより、彼らのテクノロジーに対する信頼が高まる。
・価値を伝えるメッセージの生成:有能な営業担当者は自分の営業パイプラインの中で、それぞれの案件に固有の価値に関するナラティブを作成し、口頭と書面の両方で伝える。これには当然ながら時間がかかり、担当者の能力によってメッセージの質が大きく異なる。そこで、チャットGPTのような生成AIを活用して、顧客データをカスタマイズされたメッセージに変換し、顧客に合わせて価値のあるメッセージをより迅速に作成することができる。
・プロスペクティング:営業担当者はプロスペクティング(潜在顧客の発掘と開拓)を軽視しがちだが、需要創出とパイプラインの開発を重要な優先事項と考える多くの営業リーダーにとって、これは残念なことだ。テクノロジーをチームメートとして扱うと、自律的なSDR(反響型インサイドセールス、顧客からの問い合わせに対応する営業活動)を展開することができ、負担が軽減される。自律的なSDRは、ソーシャルメディア・プラットフォーム、外部の企業データベース、SECファイリング(米証券取引委員会に情報開示する書類)などのソースからデータを収集して、営業のコンタクトデータを社内の顧客管理システムと照合する。そして、見込み客の適格性を確認し、アウトリーチを自動的に生成するので、営業担当者はそれらを検討して承認するだけでよい。
・ソリューションデザインとディールクロージング: AIはリアルタイムの在庫情報、製品仕様、顧客からの提案の依頼を利用して、営業担当者が検討するためのソリューションと見積りを自動生成する。価格の承認を得るために担当者がディールデスク(一元的に取引を管理するチーム)と何度もやり取りする代わりに、AIがデータに裏打ちされた価格設定の正当性をリアルタイムで示し、価値に基づく理由を提供することによって、担当者が自信を持って顧客を説得し、より効果的に取引を成立させやすくなる。
このようなユースケースに注力すれば、筆者たちの計算では、営業リーダーは営業担当者の時間の4分の1を解放できるだろう。
テクノロジーが真のチームメートになるために、営業担当者はテクノロジーを十分に信頼して、当事者意識を共有したり、場合によっては営業プロセスの主導権を譲る必要がある。
これは「テクノロジーの受容性」と呼ばれるもので、営業担当者がテクノロジーを信頼しているか、テクノロジーを使いこなせるという自信があるか、営業アプローチの変更を積極的に受け入れるかどうかに左右される。いずれの要素もビジネスリーダーが影響を与えることができる。
さらに、営業担当者は何よりもテクノロジーの新しいチームメートと効果的に関わるために、AIに関するプロンプトエンジニアリング、ハルシネーション(幻覚)の特定、創造性などのスキルの開発に取り組む必要がある。リーダーは、部下が生産的かつリスクの低い方法でテクノロジーのパートナーの能力と限界を試せるようにして、これらのスキルの開発を支援できる。