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──前回の記事:「組織はなぜ変われないのか」を脳科学の知見から解き明かす(連載第1回)
新型コロナ危機が収まったあとも激しい変化の日々は続く
本書『CHANGE 組織はなぜ変われないのか』のこの文章を書いている時点で、新型コロナウィルス感染症のパンデミックにより、世界の不確実性と不安定性が目を見張るほど高まっていて、私たちは激しい変化の日々を生きている。半年後、あるいは1年後や2年後の「ニューノーマル」(新しい常識)がどうなっているのかという議論も盛んだ。
そうした議論は興味深いし、刺激的でもあるが、しばしば物事の正しい理解を妨げる。コロナ禍を「数十年に一度の出来事」のように位置づけると、受け身の発想に陥り、最も重要なことを見落としかねない。それは、今回の危機は一時的な異常事態ではなく、かなり前から続いてきた根深い潮流に拍車がかかったにすぎないという点だ。
歴史を通じて、人類のまわりで起きている変化の量、そしてその変化の複雑性と激しさは、数度の波を経験しつつもおおむね増大し続けてきた。これは、産業革命の前から続いてきた傾向である。ほぼあらゆるデータによれば、この潮流は、新型コロナ危機が収まったあともさまざまな面で続くと予想できる。
変化を突き動かす要因は、感染症の流行だけではない。ほかにもいくつもの要因がありうる。たとえば、人工知能(AI)などの破壊的テクノロジーの進化、世界の一体化、世界中に大きな影響を及ぼすようになっている社会運動や政治運動などが挙げられる。
しかも、人類のまわりで起きている変化と、人類が組織や日々の生活で成し遂げている変化のギャップは、明らかに拡大している。本書で詳しく述べるように、このギャップが生み出す危険は大きくなるばかりだ。漸進的な改善を続けるだけで十分だと人々が思い込んでいる場合、その危険はことのほか大きい。
一方、変化に伴うリスクは、避けることが可能になりつつある。本書第2章で紹介するように、変化に関する最近の科学的研究により、悪い結果を減らすための、理解しやすく実践しやすい方法論が明らかになりはじめている。脳科学、ビジネス史、組織論、リーダーシップ論などの科学的な研究成果を基に、再現性があり、教えることが可能な方法論を導き出して、どのような場面においても、それを有効な戦略に転換できることがわかってきた。
すでにこれらの知識を活用している企業もある。そのような企業は、変化の時代がもたらすチャンスを生かし、自社の人たちに目覚ましい成果を上げさせている。変化の時代は、個々の企業だけでなく、社会全体に大きな価値を生み出す好機になる可能性もある。