大勢がリーダーシップを振るい、もっと大勢が恩恵に浴する

 この3種類の研究を参照することにより、大勢の人たちにリーダーシップを発揮させて、より速く、より賢明な変化を促進し、内部の現実と外部の現実の間のギャップを埋めるための現実的な方法論が明らかになる。

 最も勇気づけられるのは、こうした新しい研究が学術の領域にとどまらず、現実世界でもしばしば目を見張るような効果を生んでいることだろう。本書では、新しい科学研究に基づく方法論と知見を活用し、これまでの常識とは大きく異なる道を歩んだ企業の実例をふんだんに紹介する。

 また、勇気づけられることがもうひとつある。これらの企業は、魔法のような秘伝のテクニックを用いたわけでもなければ、特異な好条件に恵まれていたわけでもないという点だ。

 社内の人々を導き、背中を押し、教育し、モチベーションをもたせて、新しい考え方と働き方を実践させ、行動を変えさせることにより、驚異的なビジネス上の成果を上げたり、ミッションを達成したりすることは不可能ではない。著者たちは、そうした実例を間近な場所でたびたび目撃してきた。

 本書では、真に目覚ましい成果を上げている企業をいくつも取り上げる。まったく新しい戦略により金融危機を乗り越えた企業もある。1年や2年かけても無理だと思われていた変革をわずか90日間で成し遂げ、大きなビジネス上の成果を上げた企業もある。社員のエンゲージメントを大きく向上させ、「最高の職場ランキング」で上位に入った企業もある。

 イノベーションの実現に苦戦していた老舗大企業が商品や働き方や戦略のイノベーションを成功させた例もある。賢明に、そして迅速に変革を成し遂げ、たった2~3年の間に、ときにはもっと短い期間で株価を2倍や3倍に上昇させたケースもある。

 このような取り組みに参加した経験をもつ人の数は、実はかなりの数に上る。著者たちが運営するコッター・インターナショナルが掲げる「大勢がリーダーシップを振るい、もっと大勢が恩恵に浴する」というビジョンの土台を成すのは、こうした変革の成功例だ。

 これらの成果は、実践的な研究の成果を活用することにより可能になった。そこで本書も、読者がいま取り組んでいたり、検討していたりする具体的な変革ですぐに実践しやすい内容にしてある。

>>連載第5回「企業が生き残るのに『グッド』で十分な時代は終わった」こちら

『CHANGE 組織はなぜ変われないのか』

[著者]ジョン・P・コッター、バネッサ・アクタル、ガウラブ・グプタ 
[訳者]池村千秋 
[内容紹介]
リーダーシップ論、組織行動論の大家、ジョン P. コッター教授、待望の最新刊がついに発売! なぜ、トップの強い思いは伝わらないのか? なぜ、現場の危機感は共有されないのか? 組織変革の成否を左右する「人間の性質」に迫る。

<お買い求めはこちらから>
[Amazon.co.jp][紀伊國屋書店][楽天ブックス]