「グッド」で十分な時代は終わった
世界の変化は、いまこの瞬間も進行している。組織に必要とされる行動と、大半の組織が実際にできることの間のギャップは、拡大する一方だ。こうした状況でお粗末な成果しか上げられずにいる組織を平均レベルまで引き上げることにも価値はある。それにより恩恵を受ける人も多いだろう。
しかし、いま求められているのは、いわばDやFの成績をBまで高めることではない。「グッド」で十分な時代はもう終わったのだ。
ほとんどの場合、「グッド」の域にとどまっていては、相変わらず資源が浪費され、成果の実現が遅々として進まず、富が生み出されず、結果として人々が苦しみ続けることになる。また、平均レベルから傑出したレベルに移行できたとしても、そのために20年以上の期間を要するのでは意味がない。20年単位でものを考えていては間に合わないくらい、いま多くのことが急速に変化している。
昔は、変化にまつわるリスクを軽減するということは、慎重に判断をくだすことを意味した。しかし、状況は変わりはじめている。最近は、変化の流れに乗り、チャンスを生かすことこそ、リスク軽減の方法になりつつあるのだ。今日の世界では、変化に素早く適応しないことほど大きなリスク要因はない。
もちろん、注意深く検討し、最新の研究成果を手掛かりに判断をくだすことは重要だ。真に傑出した成功例を参考にすることも有効だろう。そうした成功を実現させた人たちをお手本にするのもいい。しかし、変化を積極的に追求する姿勢を忘れてはならない。
本書『CHANGE 組織はなぜ変われないのか』で著者たちが目指したのは、読者を刺激して、変化を受け入れ、さらには変化を追求するよう後押しすることだ。
実際、変化を追求しないのはもったいない。人類の歴史のほとんどの時代、人々が変化に対処しやすくする方法を生み出した人たちは、自分自身も大きな恩恵に浴してきた。キャリアで大きな成功を収められるだけでなく、人生への満足度も高まる。物質的なご褒美を手にするだけでなく、大きな尊敬も集められる。単に生き延びるだけでなく、真の成功を謳歌できる。そして、心から誇りに思える「遺産」を残すことができる。
今日の企業が、そして人類全体が直面している試練は、あまりに大きい。新型コロナウィルス感染症のパンデミックで浮き彫りになったように、難しい状況に適応して対処する能力は、成功を謳歌するだけでなく、生き延びるために不可欠になっていると言っても過言ではない。
もっと多くの変化が必要だ。そうした変化は、人間の性質、現代型組織の限界、この時代に求められる(そして可能になる)リーダーシップについて理解を深めることにより実現できる。以下では、この点を見ていきたい。
>>連載第6回「人間には脅威を察知し、取り除こうとする本能がある」はこちら
[著者]ジョン・P・コッター、バネッサ・アクタル、ガウラブ・グプタ
[訳者]池村千秋
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