問題の原因がどこにあるかを知る
過去1世紀半ほどの間に、現代型組織が世界を席巻した。その過程で、一部では、変化への対応力を強化する動きも見られるようになった。部署横断型の特別チームを設けたり、官僚主義を減らしたり、新しいアイデアに前向きな組織文化を育んだりといった取り組みは、すっかり当たり前になった。
また、今日の組織は、変化に適応し、新しい機会を生かすために、もっと新しい方法論も採用している。新しい戦略、デジタル・トランスフォーメーション、リストラクチャリング、組織文化の変革、М&A、アジリティの向上(これはソフトウェア開発の手法を応用したものだ)などである。
不確実性が高く、変化の激しい時代に対処するうえで、これらの方法論が大いに役立つ可能性はある。しかし、著者たちの調査によると、こうした広く用いられているアプローチの効果は限定的なものにとどまっている場合が多い。この点では、テクノロジーの進化により、工業化社会の時代とは大きく異なる状況にあると思われている組織も例外ではない。
人も組織も今日の世界に適応することに苦労している。少なくとも、大きなチャンスを逃していることは間違いない。人間の性質は、いまとはまるで異なる生き方が当たり前だった時代に形づくられており、企業の組織構造は、もっと変化が遅くて予測可能性が高かった世界に合わせて設計されているためだ。
聡明な人たちは、変化の必要性を、それも迅速に変化することの大切さを理解しているが、実際に変化を遂げられるケースはきわめて少ない。それに、言ってみれば、時速150キロや300キロで走らなければ傑出した成果を上げられないときに、時速50キロや100キロでしか走れないのは、途方もない苛立ちとストレスの源になりかねない。
この状況を改めることは可能だ。その第一歩は、現代型組織の限界を知り、問題の原因がどこにあるかを知ること。そして、次の一歩は、安定性と効率性の向上と、スピードと機敏性の向上を両立させるために、組織をどのように変えることが現実的かを検討することである。この点については、本書でさまざまな実例を通じて論じていく。
[著者]ジョン・P・コッター、バネッサ・アクタル、ガウラブ・グプタ
[訳者]池村千秋
[内容紹介]
リーダーシップ論、組織行動論の大家、ジョン P. コッター教授、待望の最新刊がついに発売! なぜ、トップの強い思いは伝わらないのか? なぜ、現場の危機感は共有されないのか? 組織変革の成否を左右する「人間の性質」に迫る。
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