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──前回の記事:「現代型組織」の限界、なぜ変化することが苦手なのか(連載第9回)
──第1回はこちら
変革のリーダーシップが失敗に終わる、典型的な落とし穴とは
新しい「変化の科学」を構成する3つ目の柱は、変化に適応しようとする組織と個人に関する研究だ。そのなかには、過去と現在のリーダーたちについての研究も含まれる(第1、第2の柱については本連載第6回~第9回、および、書籍『CHANGE 組織はなぜ変われないのか』を参照)。
著者たちの初期の研究でもすでに明らかになっていたように、変革への取り組みが失敗に終わるのは、人々の切迫感が足りず、変化が加速している世界に対応できない場合だ。とくに、ごく少数の人間が複雑な変化の担い手になろうとし、その人たちが広い意味での関連知識をもっておらず、社内全体に人的ネットワークを育めていなくて、リーダーシップのスキルを欠き、強い切迫感をいだいていない場合、変革はますます難しくなる。そうしたケースでは、戦略に関するビジョンが生煮えだったり、十分に周知されなかったりすることが多いためだ。
理性と感情の両面で説得力をもって変革の必要性を訴えられなければ、変革への支持を十分に集めることは不可能に等しい。困難な変化を推進・継続するために必要な行動を引き出せないのだ。
しばしば、マネジャーたちはコントロールを手放すことに消極的で、社内の草の根レベルの行動を妨げてしまう。変革への取り組みでとりあえず前進があったとしても、なかなか変革への支持と勢いが生まれない。せっかく変革への気運が高まっても、前進を祝福するのが遅かったり、祝福する機会が少なかったりして、それが長続きしない場合もある。
また、変革の成功が視野に入ってくると、早まって勝利を宣言し、いわば最後まで完走せずに終わってしまうケースも非常に多い。達成された変革の脆さを十分に認識せず、新しいやり方を組織のシステムや構造にしっかり根づかせることを疎かにするケースもある。
新たな研究の蓄積により、成功する変革とはどのようなもので、はまりやすい落とし穴はどのようなものかという理解が精緻なものになってきた。近年の研究では、複雑性と不安定性を増し、変化が加速している世界における比較的新しい実例にも光が当てられている。
そうした研究を通じて、変革の成功を妨げる落とし穴を再確認できただけではない。もうひとつ見えてきたことがあった。大掛かりな変革が目覚ましい成功を収められるのは、胸躍るようなチャンスを明確に説得力をもって示すことから出発したケースなのである。