リーダーが労働安全問題に積極的に取り組む方法

 この戦略的パートナーシップの成功は、労働者の安全に焦点を当てることで、企業が卓越したオペレーションを達成できることを示している。この目的を共有する経営幹部が、個人的に安全の重要性を受け入れ、それを周囲に伝えることで取り組みは大きく前進する。安全性を強力に訴える方法の一つは、それを採用、昇進、賞与の重要な要素とすることである。その際には、安全パフォーマンスを実際よりもよく見せるためにマネジャーがけがや危険を過少報告してしまえるような制度を構築しないよう注意したい。

 すべてのけがや、労働者が間一髪で重傷を免れた状況は、けがの発生原因を理解するためのツールと見なされるべきであり、作業要件やトレーニングプログラムの策定に利用されるべきだ。けがが起きる前に危険因子を特定するよう労働者を促さなければならない。重大な危険因子を認識し、それを速やかに是正することは、会社とそのリーダーの安全に対するコミットメントを示す。

 これらのアプローチは、危険性の高い業務を担うあらゆる企業の経営幹部が適用できる。ET&D戦略パートナーシップが実証しているのは、通常は競合関係にある企業のリーダーが、安全性に関するコラボレーションという当初は気まずく感じるような一歩を踏み出すことで、それが業界全体を向上させることに気づき、多くを得るということだ。パートナーシップの開始以来、業界最大手の建設会社数社のCEOは定期的に集まり、労働者の安全を確保するために何をすべきかを検討している。これは、安全が(年によって変わることのある)単なる優先事項ではなく、企業全体の基本原則であるという強いメッセージを全従業員に送っている。

 こうしたコラボレーションには、さらに多くのメリットがある。より多くの企業が分析のためにデータを提供することで、統計がより確固なものになり、競合他社に対する自社のパフォーマンスの評価が可能になる。より多くの事故調査が、ベストプラクティスの開発、トレーニングプログラムや安全性に関するメッセージの設計の改善に役立つ。

 かつて職場の安全性においてリーダー的存在だった企業が、コスト削減の財務的なプレッシャーがかかったり、CEOが引退して後任者が新たな優先事項を取り入れたりすることで、安全性を軽視するようになってしまうのを筆者は目の当たりにしてきた。ET&D戦略パートナーシップのような協働的で業界横断的な取り組みは、組織のリーダーが交代しても、CEOの積極的な関与とコミットメントを維持する。

 送電線網の修理に携わる企業は、今後数年にわたりさらなる困難が待ち受けていることを認識している。整備不良の送電線が甚大な山火事を引き起こし、ハリケーンや竜巻による停電の規模も頻度も拡大している。ET&D戦略パートナーシップが推進する安全慣行の変革は、間違いなく勤務中の死亡や重傷の増加を防ぎ、自然災害が業界の労働者の悲劇につながる可能性を減らすだろう。

 危険性の高いその他の産業がET&D戦略パートナーシップから学べることは、労働者の安全はコストではなく、投資として見なされるべきであるということだ。労働者の安全を事業の中心に据えることで、人命が救われ、けがが防止されるだけでなく、CEOから現場に至るまで、全従業員が卓越した業務の達成により真剣に取り組むようになる。


"Worker Safety Needs to Be Central to Your Company's Operations," HBR.org, September 13, 2023.