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ステークホルダーとの信頼をいかに構築するか
フェイスブックは、「素早く動き、破壊せよ」を非公式のモットーにしてきた。しかし、リーダーシップ論の専門家であるフランシス・フライとアン・モリスに言わせれば、このモットーには重大な欠陥がある。リーダーがこのモットーに従っていては偉大な企業を築けない、というのである。
傑出したリーダーは、「素早く動き、修正する」ことを実践している。自社が直面している手ごわい問題を解決しつつ、より強力な組織を築くのだ。フライとモリスの新著Move Fast and Fix Things (未訳)では、リーダーが難しい課題に対処し、素早く変化を起こすための5つの戦略を紹介している。
1. 自社が直面している真の問題を明らかにする(「変革の足を引っ張る組織に共通する10の特徴」を参照)
2. ステークホルダーとの信頼を構築(もしくは再構築)する
3. チーム全体が成功できるように、インクルーシブ(包摂的)な環境をつくる
4. 起こしたい変化について、説得力あるストーリーを語る
5. 切迫感を持って、計画を実行に移す
ここでは、5つの戦略のうち「ステークホルダーとの信頼を構築(もしくは再構築)する」を取り上げる。この中でフライとモリスは、個人の信頼と同じように組織の信頼も、共感、ロジック、オーセンティシティの存在に依存していると論じている。しかし、ほとんどの組織は、これらの信頼の柱のうち少なくとも一つが揺らいでいる。あなたの組織の進歩を妨げているのはどれだろうか。
* * *
組織を信頼するために、ステークホルダーは次の3つを信じる必要がある。組織が自分のことを気遣っていること(共感)、組織が自分のニーズを満たす能力があること(ロジック)、組織が有言実行すると期待できること(オーセンティシティ)だ。人が信頼を失う時と同じように、信頼を失いつつある組織、あるいはできる限りの信頼を築けずにいる組織は、この3つのいずれかが揺らいだり、ぐらついていたりする。以下は、筆者らが最もよく目にする信頼に関する問題と、3つのうちの何が揺らいでいるかを示したリストだ。
(1)選択することへの嫌悪
この問題は、合意形成から組織が偉大であろうとする行動まで、あらゆる形で現れる可能性がある。複数の選択肢を用意するほうが安全だと感じるかもしれないが、「すべての人」の要望に応えるほうが会社にとってはるかにリスクが高い。何かを選択することを拒めば、凡庸になる危険性を高める。
・信頼の揺らぎ:ロジック
(2)英雄的な従業員への依存
多くのビジネスモデルは、実際にいる従業員、つまり不完全で仕事に縛られずに生きている人のために設計されているわけではない。企業が理想とする従業員のために設計されている。もし、あなたの事業が継続的に業務の範囲を超えて貢献する従業員に依存する仕組みであれば、そうした夢のような人を見つけ、彼らを高額な報酬で報うために力を尽くさなければならない。実際、それに取り組んでいる組織はほとんどない。
・信頼の揺らぎ:ロジック
(3)ピカピカ症候群
人間の脳は、古いもののほうが重要であっても、新しいものに注目するようにできている。新しい機会を追い求める上で、意図の欠如(堅苦しい表現にすると「規律の欠如」ともいう)は、あなたのビジネスモデルを危険にさらす。新商品や新市場における素晴らしい冒険は、緊急の優先事項から目を逸らすというコストを含め、よい面を誇張してリスクを軽視することにつながる。そしてこれは、不明瞭なROI(投資収益率)の計算式によって正当化されることが多い。他のタイプの夢想的な思考を伴う場合もある。
・信頼の揺らぎ:ロジック