(4)エンゲージメントが低い中間管理職
筆者らが「不透明な中間層」と呼ぶ組織の管理職は、多くの場合、企業の現実と目標の間にある本当の乖離を知る唯一の人々である。彼らは、成功するためにどれだけの努力が必要か、そしてそこに至るまでの真の危険性を理解している。通常、成功に至るまでに失うものが多く、得るものが少ないからだ。それにもかかわらず、中間管理職は大きな変革が必要になる際、力を解き放たれることなく、最前線の現場を鼓舞することやトップの賛同を得ることを重視するリーダーシップチームに存在を見過ごされがちである。
・信頼の揺らぎ:共感
(5)他者の時間に対する無関心
あなたは部下の時間を最も戦略的な資産として扱っているだろうか。これは、筆者らがリーダーに内省を促すためによく使う質問で、何度も繰り返し述べてきた。あまりに多くの組織が、役に立たない人事のソフトウェアから、かつての仕事の感覚を懐かしむために全社員に出社を強要することまで、あらゆる点で従業員の時間を浪費することに無頓着だ。その機会損失は計り知れない。
・信頼の揺らぎ:共感
(6)巻き添え被害に対する鈍感さ
これは「素早く動き、破壊せよ」の「破壊」にあたる部分で、組織の文化に組み込まれることがある。しばしば意図しない損害に対する鈍感さとして現れ、「最善を尽くした」というストーリーによって正当化される。ビジネスの一部(「財務データを守るために最善を尽くした」など)に関して、そうしたアプローチを容認しない組織であっても、ユーザーや従業員に危害を加えないように「努力した」ことで満足する場合がある。
・信頼の揺らぎ:共感
(7)「日曜日の恐怖」の高い発生率
かなりの割合の同僚が、出勤について考えるだけで恐怖を感じているなら、会社と従業員の関係は、壊れていないとしても緊張状態にある。時には未熟な(あるいはさらにひどい)マネジャーの責任もあるが、大勢の人々がこのような予期不安を経験している場合は、組織に修正すべきレベルの問題がある(率直に言うと、従業員が貢献できることのうち、わずかしか実現されていない)。
・信頼の揺らぎ:共感
(8)取締役会を喜ばせる
これは、私たち人間の衝動に根ざしたもので、特に相手が自分の組織や仕事の将来に重大な影響を及ぼす可能性がある場合、その人が聞きたいと思うことを伝えようとするものだ。ここで言及しているのは詐欺や詐称のことではなく、現実をそっと隠し、ごまかし、つくり上げる習慣のことである。取締役会はマネジメントされることに敏感で、一般的に真実の一部だけ伝えていることを見抜くのに優れた人々で構成されているため、この信頼に対する打撃は、私たちが考えるよりも大きくなりがちだ。取締役会が本当にあなたに求めているのは、会社が問題を解決するために必要な情報となる。
・信頼の揺らぎ:オーセンティシティ
(9)整合性の欠如に対する寛容さ
マーケティングチームは、製品チームができないことを約束していないだろうか。ビジネスのあらゆる面で整合性の欠如は問題だが、組織レベルのずれに最も注意を払う必要がある。筆者らがよく目にするのは、戦略と文化のギャップだ。たとえば、イノベーションの戦略が、型にはまった文化の上に形成されるような場合だ。
・信頼の揺らぎ:オーセンティシティ
(10)実力主義の妄想
実力主義であるとみずからに言い聞かせながら、同じタイプの人材を採用し、昇進させ、維持し続けているような場合である。組織のトップにいる人間が、他の従業員や顧客、あるいは事業を展開するコミュニティの人口分布とかけ離れているなら、その組織は実力主義ではないと断言できる。
・信頼の揺らぎ:オーセンティシティ
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本稿は、2人の近著Move Fast and Fix Thingsからの抜粋に編集を加えたものである。
"10 Pitfalls That Destroy Organizational Trust," HBR.org, October 03, 2023.