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ビジネススクールの学びを活かす
JBCCとは何か
「ビジネススクールの学びを活かしたい」「みんなで力を合わせて何かを成し遂げたい」「力試しの場」──。
国内でMBA(経営学修士)の取得に励む学生がその課題解決力をチームで競う「日本ビジネススクール・ケース・コンペティション2023」(JBCC、ダイヤモンド社などが協賛)が始まった。14回目となる今年は、計27校152チーム(708人)がエントリーし、うち20チームが予選を通過した。11月26日に立教大学・池袋キャンパスで本選が開かれ、セミファイナルを勝ち抜いた5チームがグランドファイナルに進出する。
JBCCは、将来の経営人材の育成を目的に、2010年から始まった大会だ。毎回、国内企業が抱える課題をテーマにしたケースが提供され、現役MBA生がチームで解決案を発表し、その提案を競う大会である。ビジネススクールで学んだ内容を実践でき、さらに学校間の人的ネットワークの形成にも役立つとあって、年々規模が拡大し、今年は過去最多となる27校のエントリーにつながった。運営は、過去にJBCCに参加したメンバーを中心に、ボランティアの実行委員会(有森武委員長)が担う。
DHBR編集部では今回、知られざるMBA生の実態に迫ろうと、同実行委の協力を得て、本大会にエントリーした現役MBA生および大会関係者(修了生含む)約780人を対象にアンケートを行い、84件の有効回答を得た。冒頭の発言は、JBCCに参加した理由についての主な回答だ。
MBA取得を目指す理由は「経営目線を持ちたい」
今回の調査は、知られざるMBA生の実態をつかむ狙いがあり、主に3つの点を明らかにしようと考えた。まず、MBA挑戦への動機、そしてMBAの学びが実際に役立つのかという点だ。次に、ビジネススクールに通う費用をどう工面したのかについて、最後に学びの時間をどう確保しているのか、その方法についてである。
まず、なぜ時間的、金銭的な投資をしてまでMBA取得を目指すのかについて尋ねた(複数回答)。その回答は、すべての年代を通して「自身のスキルアップのため」が最も多く、その割合も全体で20%を超えていた。
自由記述回答においては、「社長の考えを知りたかったから」(40代前半、課長職)や「レポートラインが社長になったため、経営の知識を身につけたかった」(30代後半、部長職)という声が目立った。
なかには「何を提案しても、戦略コンサル出身の経営企画部長に『全然ダメ』と言われ続けて、『このやろう、見返してやる!』と怒りにも近い感情から、MBA取得を志した」(30代前半、課長職)という回答もあった。
MBA挑戦を通して得られるスキルは「経営目線を持つこと」と言える。現状のポジションに安住せずに、自身の能力を高める努力を惜しまない。そのような考えを持つ人がMBAに挑戦しているようだ。
キャリアに直結しなくても研鑽を続ける
さらに動機を掘り下げて見ると、その2位以下の理由については、年代によってばらつきがあった。今回のアンケートの平均年齢は41.8歳のため、40歳未満と40歳以上に分けて紹介しよう。
まず40歳未満の2位は、「教養を深めるため」(12.4%)と「社内・転職を問わずキャリアチェンジを目指すため」(12.4%)だった。キャリアに直結しない分野でも研鑽を惜しまず、これまでの自分とは違うステージに進みたいという強い意識を持っていることがわかる。
一方、40歳以上の2位は「経営層・管理職など組織での役割に応じたスキルを身につけるため」(11.6%)と「社内・転職を問わずキャリアチェンジを目指すため」(11.6%)が並んだ。より自身のキャリアステージに応じて具体的なビジョンを持ってMBAに臨んだ背景がうかがえる。
実際、「常日頃より(社内外問わず)経営層と現場との認識齟齬によって板挟みになるケースが多発していた」(40代前半、課長職)、「会議で上司(社長)から自分が何を伝えたいのか分からないとか、思考が浅いなどの指摘を受けた」(50歳以上、課長職)という回答からも、MBAでの学びが中間管理職にとって必要なスキルであることが見て取れる。
また、すでに起業や新規事業、部門運営において「失敗」の痛手を味わっている人も少なくなかった。「社内起業で赤字を経験し、何とか黒字に持っていくための道筋を考えたかった」(30代後半、係長・主任職)や「6年前に組織風土改革に失敗したが、リベンジするため」(40代後半、部長職)というように、リベンジに燃える層もいた。
全体として、予想外に少なかったのが「転職によるキャリアアップ」という回答で、全体の8位(5.5%)に留まった。入学前から明確に転職を意識してMBAを取得する層はそれほど多くないということだろう。実際、「MBA取得後のキャリアは決まっているか(決まっていたか)」という問いかけには「いいえ」が半数を超えた。
ただし、「いいえ」と回答した中にも「MBA在学中の転職」を実現した人もいる。また、新規事業へのコミットや起業などを検討中というコメントも寄せられており、ビジョンは明確であるものの、キャリアを長期的にとらえて、複数の選択肢を用意しているMBA生が多いと考えられる。