MBAは「机上の空論」ではない
「いまの仕事に役立つ」と答えた受講生が97%

 MBAは、一般的な資格学習と異なり、「実務的ではない」との批判がある。そこで「ビジネススクールでの学びがいまの仕事に役立っているか」と尋ねた。すると、「とても役立っている」と「ある程度役立っている」と感じる学生が合計で97%を占めた。

 その理由は主に3つある。第1に、前述した通り、MBAの学びによって経営者目線を持つことで、組織で経営層と対話できるようになることだ。実際、「経営会議において経営者の発言内容の本質を理解することができるようになった。視座が上がった」(50代前半、課長職)という趣旨の回答が目立った。

 第2に、理論やケースを学ぶことで、自社の「現在地」がよりはっきり見えるようになることだ。回答の中には「自社でうまくいっていない理由(原理原則から外れていること)が明確にわかる」(50代、部長職)というものや、「会社の既存ルールが現在のビジネス環境に適合しているかどうか判断できるようになった」(30代前半、係長・主任職)というものもあった。

 第3に、MBAの学習によって、答えのない問題に対するアプローチを身につけられることだ。「どれだけ複雑な課題に対しても、ゼロベースで考えられるようになり、自信がついた」(40代前半、課長職)や「答えのない問いに向き合う方法論を得た」(40代後半、課長職)という声があるのも、そのためだ。

 MBA生は、理論と実践の間を行き来することで、意思決定の力を磨いている。それが自信につながっていることを示す結果となった。

MBA受講生の80%以上が活用、知られざる国の支援制度

 次に取り上げるのが、MBA生の学費に関する内容だ。MBA取得を考える時、多くの人が悩むのが、その学費だろう。

 国内ビジネスクールに関する調査(2020年度)によると、初年度の納入金は全体平均で135万2000円(私立平均は154万8000円、国公立平均は85万6000円)かかる。MBAは一般的に2年制であるため、必ずしも安い金額とはいえないだろう。

 そこで、入学費用をどのように用意したかを尋ねると、「自己資金」が79.5%に上った。これは、両親や配偶者など周囲からの援助(3.6%)、企業負担(4.8%)、教育ローン(10.8%)を大きく上回った。

 ただし、この結果には注意が必要だ。実は、回答者の84.3%が活用した国の制度がある。それが雇用保険法のもとに創設された「専門実践教育訓練給付金」である。一定の条件を満たせば、受講生の支払った学費のうち、通常50%、最大で70%が国から支給される。つまり、学費のハードルを大幅に下げ、MBA挑戦に一役買っている制度なのである。

 ビジネススクールによっては対象外の場合もあり、2014年に新設されたためか、ビジネスパーソンにはあまり浸透していない、知られざる資金調達手段と言えるだろう。