グループの力を活用する
個人の自主性は重要だが、それだけでは十分ではない。チームには、全員が互いに責任を持ち、学び合うことを奨励する文化が必要だ。「協働するよう意図的に求めるとよい」とマクダウェルは言う。「具体的な目標を掲げてチームを結成させ、その目標を達成するための明確さと自由を与えれば、あなたがいなくても驚くようなことが起こる」
たとえば、あなたが30人のマーケティングチームを管理していて、チームメンバーらが制作するコンテンツを監督するのが仕事だとする。すべてを個々にレビューするのではなく、先輩社員が後輩の仕事をレビューし、全員がフィードバックをし合うピアレビューのシステムをつくることができる。「すべての意思決定が自分に流れるようにするのではなく、グループに任せる」ことを目指そう。
干渉しない
信頼は重要な要素だ、とマクダウェルは言う。信頼がなければ、どれだけ仕事を任せても、求めている成果は得られない。「自律性を与えておきながら、突然その仕事を奪うようなことをすれば、チームは無力さを覚える」とマクダウェルは述べる。それはまた、双方にフラストレーションをもたらす。チームメンバーはあなたの干渉に憤り、「あなたは、なぜ誰も責任を果たさないのかと悩むことになる」とマクダウェルは指摘する。
部下が学ぶ過程で間違いを犯すこともあるのだと受け入れる必要がある。グプタが勧めるのは、毎日短時間のチームミーティングから始め、進捗状況を把握し、指導をすることだ。チームメンバーには、抱えている課題や、どうすればあなたがサポートできるかを尋ねる。あなたの仕事は「話を聞き、それに応えることであり、尊大な態度を取ることではない」とグプタは言う。
上司と部下をマネジメントする
大きなチームを率いるもう一つの難しさは、自分の仕事上のニーズとチームのニーズのバランスを取ることだ。自分の上司をマネジメントして適度に詳細な情報を提供し、自分とチームメンバーが相応の評価を受けられるようにする。一方で、チームを指導し、チームメンバーのパフォーマンスについてフィードバックを提供するとよいとマクドウェルは言う。バランスを取るのだ。
マクドウェルは「ゴルディロックス」的なアプローチ(童話が元になった適度なものを選択することの比喩)を取るようアドバイスする。あなたの一日を支配する問題が小さすぎるなら、あなたは抜かりなく手を回しすぎで、干渉している可能性が高い。問題が大きすぎるなら、最前線で起きていることを理解していない可能性が高い。「問題が適度な大きさなら、現場で起きていることを把握しつつ、長期的な戦略的優先事項やチームの指導に時間を費やすことができる」
チームとの接し方に関しては特に、自分の口調やペルソナに気を配らなくてはならないとグプタは言う。「多くの上司は、自分の上司をマネジメントするのは得意だが、部下をマネジメントするのは苦手だ」と彼は指摘する。「無私無欲であれ、とまでは言わないが、あなたの関心が自身の出世に向いていると直属の部下が感じたら、長期的にはあなたにとってダメージとなる」
つながりを持ち、サポートする
直属の部下が多いほど、一人ひとりに気を配るのは難しくなる。たしかに、あなたは手いっぱいで仕事を山ほど抱えているが、あなたが忙しすぎるという印象を部下が持つことになったら、部下は自分が重要でないかのように感じてしまう。「部下に忙しすぎると思われたら、あなたは管理能力と指導力を失う」とグプタは言う。「部下には、あなたが自分のために時間とエネルギーを割き、支えていると感じてもらう必要がある」
チームメンバーと一対一の時は、相手に全神経を集中させよう。携帯電話をしまい、通知を無視して、しっかりと意識を向ける。そして、チームメンバーの勝利と成功を称えること。「自分は評価されていると感じてもらおう」とグプタは言う。マクドウェルは、チームの中で昇進を望む人に能力開発の機会を与えることを勧める。特に、部下の成長を助けると同時に、あなたが自分の時間を確保できるような、一挙両得の機会を探すとよいと言う。「組織にとって重要な仕事をこなし、有望な従業員が注目されるようにする」
部下の数を減らすことを求める前に、よく考える
ストレスを感じていたり圧倒されていたりすると、直属の部下を減らしてもらいたくなるが、その要求をする潜在的なリスクもよく考えておきたい。「経営陣に間違ったメッセージを送ることになりかねない」とグプタは言う。自分の役割から身を引きたがっているとか、あなたに責任を負う能力がないなどと思われ、キャリアに思わぬ影響を及ぼす可能性があるという。
しかし、自分の仕事に対してチームの規模が大きすぎること、あるいはそれが組織にリスクをもたらしていること(直属の部下が何十人もいる看護師など)を示せるのであれば、その問題を「上層部に上げる権限を持っていると考える」べきだとマクドウェルは言う。「何が課題なのか、なぜ変革が必要なのかを明確にし、解決策を提示するとよい」
覚えておくべき原則
すべきこと:
・チームメンバーに、できる限り意思決定の自律性を与えよう。そうすることで、チームメンバーはスキルと自発性を身につけ、あなたは全体の課題に集中する時間を得られる。
・グループの力を活用しよう。チームには、全員が互いに責任を持ち、学び合う文化が必要である。
・チームとの関わり方に気を配ろう。直属の部下に、あなたの関心が自身の昇進に向いていると思われたら、あなたのリーダーシップは損なわれる。
してはいけないこと:
・マイクロマネジメントは、人々のやる気を損なう。チームメンバーが求めてきた時に指導とサポートをしよう。
・チームメンバーに対して自分は忙しすぎるという態度をとると、チームメンバーを遠ざけてしまう。チームメンバーのそばにいて関わりを持ち、サポートしよう。
・直属の部下の人数を減らしてほしいと安易に求めると、自分の役割に対するコミットメントについて誤ったメッセージを送り、キャリアに影響する可能性がある。