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いつ、どのような言葉を発すると効果的なのか
言葉は、市場のほぼすべてのやり取りにおいて重要な役割を果たしている。営業担当者が見込み顧客に、リーダーがチームのメンバーに、顧客サービス担当者が顧客に話をする時にはことごとく、言葉が関わってくる。最近の企業は、顧客との関係をマネジメントしたり、サービスを自動化したり、ビジネス上の意思決定を行ったりするために、自分たちが用いる言葉についてのデータを取り、言葉の使い方を最適化しようとする。
企業や従業員、消費者が発する言葉の内容が重要であることは明らかだが、いつ言葉を発するかも重要だ。たとえば、営業活動では、特に早い段階で顧客に多くの質問を投げかけ、顧客が解決したいと考えている問題について情報を得るというやり方は、よく知られている説得戦略の一つである。しかし、これとは異なるタイプの言葉を使ったほうがよい場面はないのだろうか。
筆者らは、さまざまな言葉やコミュニケーションスタイルを用いるタイミングがどのような影響を持つかを調べるために、2つの異なる業種の企業における数万点の言葉のやり取りと、1000人を対象に行った実験の結果を分析した。両方の研究からは、同じ結論が導き出された。言葉を用いるタイミングが顧客の満足度と購買量を大きく左右するとわかったのである。本稿では、その研究結果について述べたうえで、最後にマネジャーがみずからの組織で言葉を用いるタイミングを見極めるために役立つウェブサイトを紹介する。
言葉のタイミングに関する研究
筆者らが採用した研究手法の特徴は、コミュニケーションのコンテンツを時系列で検討したことだ。ある言葉を用いることによるコストと便益が会話の段階ごとに増大したり減少したりすると考えたのである。この考え方に基づくアプローチがビジネスの現場にどのようなインパクトを及ぼす可能性があるかを検証するために、研究では、人称代名詞、問いかけ、温かみと有能さを醸し出す表現など、言葉のさまざまな重要な要素に光を当てた。
顧客サービスの場で従業員が発する言葉が表現する温かみと有能さについて考えてみよう。現場の従業員は、顧客とのやり取りの冒頭で「こんにちは。ご機嫌はいかがですか」と声をかけることもできれば、「お手伝いできることはありますか」と声をかけることもできる。これらはいずれもよくある声かけの言葉だ。しかし、前者は温かみを表現する言葉であるのに対し、後者は顧客のニーズの解決に焦点を当てる言葉といえる。
従業員は顧客との会話を締めくくる際にも、温かみのある言葉を使うことができるし、有能さを重んじる言葉を使うこともできる。たとえば、「今日はお話しできて光栄でした。お元気で」という場合もあれば、「問題を解決できて嬉しいです。ではさようなら」という場合もあるだろう。