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主体的な時間管理とウェルビーイングの関係
労働者、とりわけ「知識労働者」と呼ばれ、ノートPCとインターネット接続があれば、すべてとはいわないが、ほとんどの仕事をこなせる人たちは、長年、自分の時間を管理する権利を求めて奮闘してきた。コロナ禍の2020年と2021年に在宅勤務をしていた時も、柔軟な働き方でも生産性を維持でき、場合によっては出社勤務以上の生産性を上げられることを上司に示した。ところが上司たちは、労働者を正反対の方向に引っ張っている。経営幹部やマネジャーは、多額の賃料を支払っているオフィスに労働者を連れ戻すために奮闘しているのだ。
この戦いは、労働者にも企業にもマイナスの影響を与えてきた。労働者は一斉に退職し(この時期は「グレートレジグネーション」と呼ばれた)、出社再開を義務づけた企業は、トップクラスの人材の採用や維持に苦労してきた。いま、とりわけZ世代(1997~2012年生まれ)の従業員が増え始め、ハイブリッド勤務や出社勤務再開に関する会話が停滞する中、より柔軟な勤務形態は、依然として多くの従業員や求職者にとって最優先事項となっている。
これらのダイナミクスの多くは2020年以降に大きく報じられるようになったが、実のところ新しい問題ではない。米国労働統計局のデータによると、離職者は10年以上前から着実に増えている。
離職者が増えている理由の一つは、自分がどのような人生を送りたいか、あるいは人生における仕事の位置付けを、労働者たちが考えるようになったことにあるようだ。現実には、人生の多くの時間が仕事に費やされており、そのため、仕事での経験が人生の満足度に大きな影響を与えている。仕事での経験と人生の満足度の間につながりがあることは、かなり前から証明されてきた。だが、近年の労働者と雇用者の対立を見て、柔軟な働き方に関連する要因が、人生の満足度に与える影響はどのくらいなのかと、筆者らは疑問に思うようになった。
仕事において、自分の時間を自分で管理できるようになると、労働者はより幸せを感じ、その仕事に留まる可能性が高まるのか。この疑問に答えるために、筆者らは全米の労働者を代表する1516人を調査した、コーネル大学の「変わりゆく労働者に関する全米調査」のデータを分析した。これには、労働者が時間的な余裕があると感じているか、仕事のスケジュールをどのくらい自分で管理できるか、仕事と人生にどのくらい満足しているか、といった指標が含まれる。その回答に基づき、仕事と人生の両方における時間の使い方とウェルビーイングの関係を調べることができた。
これまでの研究では、時間の使い方(とりわけ自分の時間を自分で管理していると感じられるかどうか)が、さまざまな長期目標に向けて努力するモチベーションに影響を与えることがわかっている。筆者らは、このダイナミクスが現代の労働者にも同じように働くかどうかを知りたいと考えた。また、やるべきことをやる時間がないと感じること(一連の研究では「時間不足の感覚」と呼ぶ)と、自分の時間を自分で管理できないと感じることの違いを理解したいと考えた。こうした感情は密接に関連しているが、常に関連しているとは限らない。たとえば、自分のスケジュールを完全に管理できていると感じていても、そのスケジュールを完遂する時間がないほどタスクで埋まっていて、時間不足だと感じるかもしれない。