ますます複雑になる企業環境

 企業を取り巻く世界は、日に日に複雑性を増している。グローバル化とITによって、新たな市場が広がり、新手のライバルも現れた。あり余るほどの選択肢のせいで、顧客を満足させることはこれまで以上に難しくなり、しかも彼ら彼女らはいっそう移り気になっている。競争優位とは何か、その定義は日々異なるばかりか、短命でもある。正しいやり方を見つけたところで、今日はうまくいっても、明日はうまくいかないかもしれない。

 複雑性の高まりは、企業目標にも表れている。現在、企業の業績目標の数は、1955年のそれと比べて平均6倍である。55年は「フォーチュン500」が初めて発表された年で、当時のCEOが掲げていた目標はせいぜい4~7つ程度だが、いまでは25~40もある。

 しかも、これらの目標の多くは矛盾している。たとえば、企業は顧客満足を追求しているが、顧客たちは低価格と高品質を求めている。ある市場に向けて製品をカスタマイズする一方で、営業利益を最大化するために標準化に向かう。また、イノベーションと効率を同時に実現しようとする。