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建設的な反論の文化は意図的に構築できる
多様な人々で構成されるチームは、多様な見解を持っている。それは当然のことだ。しかし彼らは、それらの見解を共有する意思があるのだろうか。多様性の高いチームが、義務感による服従と抑圧的な集団思考の傾向を示す様子を筆者らはしばしば目にする。
どうすれば、この文化は変わるのだろうか。イノベーションを生み育むために、斬新で非線形の、相反する意見を解放するようチームを説得するにはどうすればよいのか。わだかまりや怒り、無礼につながらない形でそれを行う方法はあるのだろうか。
文化の構造を次のように考えてみよう。共有される行動様式が規範であるとすれば、規範の集合が文化だ。規範は文化の主要な構成要素である。
筆者らはこの30年にわたり世界各地のチームと協働する中で、チームのイノベーション能力を示す唯一かつ最も重要な予測因子は「建設的な反論」の規範であることを明らかにしてきた。建設的な反論とは単純に、チームが相反する見解を尊重し、交換し合う能力である。
これは学習可能な行動ではあるものの、規範として確立するのは非常に難しい。チームメンバーが落ち着いて冷静になり、感情を制御することが求められるうえに、強い負の感情や防衛的な態度を生じさせることも少なくない。
チームが建設的反論を自然に行動様式として取り入れることはないが、計画的な取り組みを通じて、この不可欠な規範を確立し維持することは可能だ。建設的反論を促進し、チームのイノベーション能力を十分に引き出すための8つの実践的な方法を以下に紹介しよう。
1. 建設的反論を明確な目標にする
筆者らが協働したある経営チームは、「破壊的」な反論の文化を持っていた。幹部らは知的対立を起こした際に、必ず個人的にも対立してしまう。反論の破壊的な性質ゆえに、形だけの合議制が長く続き、その折々に激しい個人間対立が生まれる傾向が見られた。
CEOがこの傾向に注意するよう呼びかけ、建設的反論を目標として追求したいと述べた時、冷笑と皮肉が寄せられた。だが時が経つにつれて、この目標は同僚間での新たなレベルの責任を生み出した。チームは次第に、質問によって平等参加を促す独自のやり方を推し進めるようになった。全員に発言機会が与えられるよう努め、応答ではなく理解するために耳を傾ける。意見をより率直に共有し、個人攻撃や感情の高まりを避けることができるようになった。
2. 基本原則を定め、コミットメントを得る
チームが基本原則と行動基準を明確に定めていない場合、曖昧さがいつまでも残り、個々人の破壊的反論を許すことになる。行動基準の成文化は必須ではなく、文書化をいっさいせずに建設的反論を規範化しているチームも多い。ただし、この規範を最も巧みに実践するチームは、期待される行動について繰り返し強調する。
たとえば、筆者らが協働したあるチームの基本原則では、個人攻撃の禁止、言語・非言語コミュニケーションにおいて敬意を払う義務、誠意を貫くことが強調されていた。別のチームは、オーサーシップ(発案者・作者としての資格、作家性)を誇らないこと、チームの議論が光よりも熱を帯び始めたら小休止すること、何かが奏功しない理由について、試作品を作成しテストする機会があるまでは判断を保留することを強調していた。