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「余白モード」を持つことのメリット
世界的な美術組織でアーカイブ部門を統括する幹部のソーレンは、ただちに経費を削減する必要があり、人員削減の可能性が高いと聞かされた。ソーレンは、すぐさま直属の部下に予算削減を命じるといった狭い考え方にとらわれず、自身の部門でミーティングを開き、その目的と持続可能性という、より広い観点からの課題について話し合うことにした。
部門内の対話を通じて、アーカイブには見落とされてきた資産があり、それを新たなプログラムに活用できる可能性があるという認識に至った。このアイデアは最終的に数千万ドル規模の収益への貢献につながり、人員削減は回避された。これとは対照的に、他の部門では次々と人員削減が進められたため、従業員の士気が低下し、燃え尽き症候群(バーンアウト)を招く結果となった。
ここ数年、筆者らは仕事において人々が用いる2つの注意モードを研究してきた。一つは「行動モード」で、具体的なタスクを管理し、予測し、効率的に成し遂げるために、タスクに意識を集中する。
もう一つは「余白モード」で、こちらは慌てることなく意識を広く向けることで、人間関係や相互依存、そしてさまざまな可能性にオープンな態度を取る(これはソーレンの経費削減への取り組みに見られるアプローチだ)。職場で余白のある考え方をすると、極めて重要なメリットがある。難題に関するインサイトが得られたり、戦略的に考えたり、チャンスを見つけたり、人間関係を築いたり、喜びやモチベーションが高まったりする、といったことだ。
残念ながら、組織では一般的に行動モードが好まれ、余白モードは抑制される傾向にある。これは驚くべきことではない。私たちは、あらゆる分野で生産性と成果に取り憑かれたような文化の時代を生きているのだ。
筆者らの研究(世界3000人以上の従業員を対象とした調査、50人のグローバル専門職との継続的な対話、リーダーおよびその部下へのインタビューを含む)によると、優れた成果を上げようとする従業員は、余白モードに移行することが、効率性や緊急性の欠如と受け取られるのではないかと懸念している。その結果、それはキャリア上の不利につながる、または上司の許可が必要であるかのように感じられるため、日常的に余白モードを持つ従業員はほとんどいない。
すべての従業員は、余白モードに移行する一定の主体性を持っているが、それを職場で実践しやすくするためには、リーダーが重要な役割を果たす。なぜならリーダーは、貴重な時間の使い方として、余白モードを正当化する(あるいは正当化しない)立場にあるからである。本稿では、リーダーが無意識のうちにチームの余白モードを妨げている実態、そしてそれに代わってどのような支援が可能かを紹介する。
リーダーが邪魔をしている場合
リーダーやマネジャーは、その行動を通じて何が許容されるかを示すため、余白モードを奨励するうえでのカギを握っている。マネジャーは次の短期的な成果を上げることで頭がいっぱいであることが多く、チームも行動モードにどっぷり陥りがちだ。たとえチームのタスクが次々と処理されていったとしても、それらが本当に正しい内容だったかはわからず、チームが成長する余地もなければ、新たな可能性を見出す喜びや関心も生まれない。このような状況では、チームの活力が失われてしまうおそれがある。