失敗したリーダーの後任に抜擢されたら、何から始めるべきか
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サマリー:失敗した前任者の後を継ぐことは極めて難しい。ある調査によれば、「混乱を引き継いだ」リーダーの半数以上は1年半以内に失敗に陥るという。この厳しい逆境を乗り越え、組織を成功に導くには、通常とは異なるリーダ... もっと見るーシップが不可欠である。本稿では、危機的状況を好転させ、チームと組織を軌道に乗せるための具体的な6つの心得を解説する。 閉じる

混乱を引き継いだリーダーの50%以上は、1年半以内に失敗する

 ジュリー(*)は、CEOになりたいと思ったことはなかった。長年、ある広告会社に勤め、管理職としてのスキルも高く、オペレーション担当経営幹部の役割を自信を持ってこなしてきた。だが、取締役会が社外から連れてきたCEOが、会社のユニークな文化とスピードに適応できないことが判明した時、会長はジュリーに後任の白羽の矢を立てた。

 失敗したリーダーの後任に抜擢されることは、大喜びできる事態ではないケースが多い。実際、コンサルティング会社ナバレントが10年間にわたり経営幹部の交代について調べたところ、「混乱を引き継いだ」エグゼクティブの50%以上が、就任後1年半以内に失敗に陥っていることがわかった。

 筆者らは、経験豊富なリーダーのエグゼクティブコーチとして、突然トップのポジションに就くことになった多くのエグゼクティブと仕事をしてきた。失敗した前任者の後に成功を収めるためには、まったく異なるリーダーシップアプローチが必要になる。

驚きの事態を覚悟せよ

 失敗したリーダーの後任として、社内の人材が抜擢されてみると、状況は思っていたよりずっと悪かったというケースは多い。

 ジュリーも、新しいポジションに就任してからわずか1週間で、それまで見たことのない財務データを見て愕然とした。信頼していた人間関係が変わり始め、かつては強固だと思っていた重要ビジネスインフラが不安定だと知って驚いた。この状況でCEOに求められる役割は自分の能力を超えているのではないか、また、ここで失敗すれば自分のキャリアに永遠に傷がつくのではないかと、ジュリーは筆者らの一人(アイケンバーグ)に懸念を打ち明けた。

 景気がよい時も、経営幹部には一定の精神的強靭さや感情労働が必要だ。ビジネスや文化、オペレーションが、自分が承知していた以上に悪い可能性があることを覚悟しておくと、真実が明らかになった時、冷静を保つ助けになるだろう。

振り返りを加速する

 トラブルに陥っている組織は、一歩下がって、現在の問題を招いた前提や思い込みの検証に時間を割いていないことが多い。問題の全体像を把握し、それを公に認めると、行動計画の無駄をなくし、よりスピーディに行動できる。次のことを自問してみよう。

・前任者が是正できなかったシステムの問題点は何か。