決定版:HBR戦略用語集
Illustration by Tim Boelaars
サマリー:本稿は『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)に掲載された40以上の戦略概念を用語集として整理したものである。多くの企業が戦略と業務効率を混同しがちな中、マイケル・ポーターの理論をはじめ「ブルー・オー... もっと見るシャン戦略」や「破壊的イノベーション」といった、競争に勝つための多様な戦略をアルファベット順に紹介する。 閉じる

戦略とは何か

 戦略とは何か。『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)の愛読者なら馴染みがある問いだろう。マイケル・ポーターの有名な1996年の記事のタイトルは、まさにこれだった。この中でポーターは、実に多くの企業が、戦略とオペレーションの効率を混同していると主張した。

生産性や品質、スピードが追求された結果、目覚ましい数の管理ツールやテクニックが生まれた。(中略)その結果、多くの場合、オペレーションは劇的に改善したが、それを持続的な収益性に結びつけられないことに、多くの企業はいら立ちを覚えてきた。そして少しずつ、ほとんど気がつかないうちに、管理ツールが戦略に取って代わるようになった。マネジャーはあらゆる側面の改善を図るうちに、むしろ競争力のある地位から遠ざかっている。

 では、この競争力のある地位とは何か。元HBRシニアエディターのアンドレア・オバンズは、巧みな分析により、ポーターの戦略論は、つまるところ、2つの大きな選択肢を示していると指摘した。それは「他人と同じことをする(ただし、もっと小さな投資で)か、他の誰にもできないことをするか」だ。

 だが、ビジネスにおいて競争に勝つためのアプローチはこれだけではない。HBRが取り上げてきた戦略に関するさまざまなトピックを調べると、新しいことを行う方法、すでにやっていることを強化する方法、そして新たな可能性に柔軟に対処する方法について、実に多くの記事が書かれてきたと、オバンズは指摘する。

 そこでHBR編集部は、こうした記事を1カ所に集めることにした。本稿は、HBRで紹介されてきた40以上の古典的な戦略概念をまとめた「戦略用語集」だ。基本的にアルファベット順に並べたが、いくつか注意点がある。まず、ここに含めたのは、HBRの特集記事で深く議論されたコンセプトで、HBRのウェブサイトで見つけられるものに限定した。また、一部のコンセプトには「正式な」名称がないが、それらにはできる限り正確な名前をつけた。その選出に当たっては、HBRのデジタル版、紙媒体、およびPR部門の編集者の推薦に基づいた。

 各コンセプトには、その発端となった記事と、その考案者(執筆者)の名前を付記した。

[ A ]

隣接領域への拡大(Adjacency expansion)

 企業が中核事業を隣接する領域に拡大すると、持続的かつ収益性の高い成長がもたらされる。

 隣接領域への拡大を繰り返し成功させる企業には、共通する特徴が2つある。まず、非常に規律が取れており、隣接領域に進出する前に厳格な審査をする。この規律は、良好な学習曲線、迅速化、複雑性の低下という形で報われる。第2の共通点は、顧客と消費経済学を非常に注意深く研究し、反復可能なプロセスを構築していることだ。

もっと詳しく:クリス・ズックおよびジェームス・アレン著 "Growth Outside the Core," 2003.(邦訳「成功パターンの展開力:コア事業の隣接領域を攻め落とす」DHBR2004年5月号)

[ B ]

バランス・スコアカード(Balanced scorecard)

 経営者がビジネスを迅速かつ包括的に把握できるようにする一連の指標。スコアカードには4つの視点と、関連する問いが含まれ、複数の領域でのパフォーマンスを同時に確認することを可能にする。

・顧客の視点:顧客は我が社をどのように見ているか。
・社内の視点:我が社はどの部分で優れていなければならないか。
・イノベーションと学習の視点:今後も改善と価値創造を継続できるか。
・財務の視点:我々は株主にどのように見られているか。