【HBR CASE STUDY】

[コメンテーター]
ダン・ローガン(Dan Logan)
トリニティ・コミュニケーションズ 社長
マイケル・マッケニー(Michael McKenney)RAステュディオ/エイビッド・コミュニケーションズ オペレーション・マネジャー
マーク P. ライス(Mark P. Rice)バブソン・カレッジ F. W. オーリン経営大学院 ムラタ記念学長
ジェフリー W. ベネット(Jeffrey W. Bennett)ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン バイス・プレジデント

[ケース・ライター]
ジュリア・カービー(Julia Kirby)
HBR シニア・エディター

*HBRケース・スタディは、マネジメントにおけるジレンマを提示し、専門家たちによる具体的な解決策を紹介します。ストーリーはフィクションであり、登場する人物や企業の名称は架空のものです。経営者になったつもりで、読み進んでみてください。

コスト・センターが独り立ちする時

「あらエリック、いいことでもあったみたいね。どうしたの」

 階段を軽い足取りで上ってきたエリック・パーマーを見て、グレース・タンスキーは思わず声をかけた。気品漂うグレースは、カムデン・ロボティックス(以下カムデン)のCEO、トム・オライリーの秘書であり、ビルの数階を占める同社の最上階にある役員室フロアの受付も兼ねている。

「また新しいクライアントから仕事の依頼が入ったんですよ。ブリンクウエアという会社が印刷物の広告をつくりたいと言ってきたんです。さっそくソフトウエア・ビジネスの勉強を始めなくちゃ」

 エリックは得意満面に答えながらグレースのデスクに近づくと、オライリーの部屋のドアが少し開いているのを横目で見て尋ねた。

「いま入っても大丈夫ですか。それともボイスメールを残したほうがいいですかね」