なぜ優秀な人材を集めても一流のチームにならないのか
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サマリー:優秀な人材を集めても、優秀なチームになるとは限らない。成果を出すにはチームの感情的知性(チームEI)が不可欠である。成果を出すにはチームの感情的知性(チームEI)が不可欠である。本稿では、チームEIを高める... もっと見るための3つの行動規範を提示し、それをチームの文化として定着させる具体的な方法を解説する。 閉じる

優秀な人材を集めても優秀なチームにはならない

 あなたは、一流の人材を集めて、会社の最重要業務を担わせる一流のチームをつくろうとしたことはないだろうか。ほとんどの組織がそうしている。そして、優秀な人材を集めても優秀なチームになるとは限らないのだとわかったことだろう。

 実際、そのようなグループに対面やオンラインで会議をさせても、うまくいかない確率は、無作為に集めたグループと変わらない。ある企業のスイス本社にある全面ガラス張りのオフィスで、筆者ら研究チームが観察した管理職チームも例外ではなかった。

 問題はあるメンバーが会議に13分遅刻し、別のメンバーが激怒したことから始まった。「我々の時間を何だと思っているんですか」とそのメンバーは怒鳴った。「全員が重要な仕事を中断して時間通りに来ているんです」。他のメンバーたちはあきれたように天を仰いでいた。チームが崩壊していくのがこちらにもわかった。

 彼らは才能豊かな人材だったが、同社の経営トップは途方に暮れていた。筆者が関わってきた多くの経営者同様、彼の高業績チーム構築戦略は、「優秀な人材を集めたら、後は運任せ」というものだった。その戦略はまったくうまくいっていなかった。

 組織のあらゆるレベルで最高のパフォーマンスを発揮するチームをつくる上で、本当に必要なのは、チームの感情的知性(チームEI)である。これは、筆者ら研究チームが20年にわたり多業種で実施した調査の結果であり、その後10年間にわたり製薬、医療、石油・天然ガス開発などの業界で実践を重ねて得た知見である。

チームEIについて理解する

 チームの感情的知性、略してチームEIは、個人の感情的知性とは異なる。チームEIとは、一人の個人が生来持っている特性ではなく、人々がチームになった際に生じる、社会的ニーズを満たすさまざまな慣習や行動規範のことである。そうしたニーズの中には、真に受け入れられ、理解され、価値を認められたいという欲求、チームの優先課題や経験に関する共通理解を築く議論への参加、チーム内での自身の影響力や主体性の実感などがある。これらの社会的ニーズを満たす行動規範は、信頼、心理的安全性、帰属意識が高い生産的な情緒的環境を醸成する。

 筆者は新著で、チームEIを高める行動規範を網羅した。そのうち、人々の社会的ニーズを満たす規範の上位3つは、「相互理解の向上」「強みと改善点の日常的な評価分析」「ステークホルダーとの日常的な対話」である。チームがこれら3つの重要性を完璧に理解し、それらを規範とすれば、メンバーのモチベーションや共通目標の達成は大きく向上する。チームメンバーは互いに質問をし合い、アイデアや知識を共有するようになるため、日々の業務がスムーズになり、意見の相違に対処しやすくなる。