優柔不断な経営陣の下でチームを効果的に率いる方法
Hans Neleman/Getty Images
サマリー:経営陣の意思決定が滞る中、チームの立て直しを迫られるマネジャーは少なくない。経営層の優柔不断は組織の勢いと信頼を損ない、社員の燃え尽きを招く。曖昧な指示のもとで停滞する組織を前進させるには、現場リーダ... もっと見るーの主体的なリーダーシップが不可欠だ。本稿では、提案の捉え直しやコストの可視化を通じて上層部の合意形成を促し、チームの士気を維持して組織を前進させるための4つの重要戦略を紹介する。 閉じる

経営陣が機能不全に陥っている時、いかにチームをマネジメントすべきか

 高成長を遂げているテック企業でオペレーション部門のバイスプレジデントを務めるローレンは、身動きが取れなくなっていた。製品への投資、組織再編、リソース配分といった重要な意思決定を、経営幹部が先延ばしし続けていたためだ。経営陣が機能せず、下の役職に責任が降りかかってきた結果、ローレンは混乱と停滞、不安を抱えたチームへの対応を引き受けざるをえなくなった。

 これは、組織で起こりがちな話だ。経済的な不確実性が高い時期や変革期には、経営層の優柔不断が組織の勢いを削ぎ、信頼を損ない、優秀な人材のやる気を低下させる。競合他社が前進する一方、停滞する組織は時間も信頼も、そして市場での存在感も失っていく。

 マッキンゼー・アンド・カンパニーによれば、意思決定の遅さは組織の業績低下と社員の燃え尽きを引き起こす大きな要因となっている。さらにギャラップも、不明瞭な期待が従業員のエンゲージメント低下の主要な要因だと指摘している。

 ローレンと同僚たちは野心的な目標の達成を求められていたが、上からの指示は曖昧で、遅れがちだった。チームは前進すべきか、立ち止まるべきかわからなくなり、勢いを失った。あるチームメンバーは「同じ場所をぐるぐる回っているだけ。本当の行き先はどこなのか」と語った。

 変化の激しい業界不安定な市場において、戦略を提示するのは本来、経営陣の役割だ。しかしそれが叶わない場面では、曖昧な言葉を明確な指示に「翻訳」し、勢いを維持し、チームを集中させる役割をシニアリーダーが担うしかない。意思決定が滞っている状況で組織を前に進めるには、シニアリーダーのリーダーシップが不可欠なのだ。

 筆者らはこれまで、こうした状況に陥った多くの企業に助言を行ってきた(フェルナンデスはエグゼクティブアドバイザーと人材育成の専門家として、ランディスはエグゼクティブコーチと基調講演者の立場で)。その経験を通じて、経営陣が決断を下せない場面でシニアリーダーが効果的に組織を率いるのに必要な4つの重要戦略を特定した。

1. 提案内容の位置づけを組み替える

 経営幹部は、提案されたアイデアを採用し、取り消すことのできない大規模かつ最終的な判断を下す際、ためらったり、決断を先延ばしにしたりしがちだ。彼らが躊躇する原因は多くの場合、アイデアそのものではなく、提案を承認することで生じるリスクの認識にある。

 そのような時に摩擦を減らす強力な方法として、提案の内容を低リスクで期間限定の実験という位置づけに組み替えるというアプローチがある。これによって意思決定者は、最初からフルスケールの計画にコミットする必要がなくなり、小規模の提案を承認したうえで、フィードバックを得て再検討する余地を得られる。

 たとえば、「全体計画をいますぐ承認してください」と伝える代わりに、「まず30日間のパイロットを実施して知見を得たうえで、規模を拡大しましょう」と言い換えよう。

 ローレンが顧客維持の施策案をめぐって経営幹部から抵抗された際、筆者らは彼女にこのアプローチを取るよう助言した。ローレンの当初の提案は、リスクが大きすぎると受け止められていた。そこで、「知見を得るための短期的なパイロット事業」という位置づけで提案し直したところ、経営陣の心理的ハードルが下がり、迅速な合意形成が可能になった。