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エグゼクティブチームが機能しない理由
筆者らの顧客である「セーラ」は、ある急成長中のテクノロジー企業のCEOに就任した時、初めてCEOを務める人物の多くと同じことを行った。すなわち、「最高責任者」の肩書きを持つメンバー全員を集めて、その集まりをエグゼクティブチームと位置づけたのである。
ほどなく、エグゼクティブチームの毎週の会議は、言わば高校生グループのランチの場のような様相を呈し始めた。18人の出席者は、他の面々に近況報告をしている素振りをしながら、ひそかに縄張り争いを繰り広げるようになったのだ。意思決定のスピードは遅くなり、物事の優先順位が曖昧になった。セーラは会議が終わるたびに、一人ひとりは優秀なのに、一カ所に集めたとたんに機能しなくなるのはなぜなのか、と戸惑わずにいられなかった。
セーラが陥っていた状況は、筆者らが相談に乗る企業幹部たちがしばしば経験するものだ。問題は、多くのリーダーと同様、セーラが最高幹部たちを、戦略実行のためのメカニズムではなく、直属の部下の集合体として扱ったことにあった。
エグゼクティブチームは往々にして、引き継がれた役職や肩書きや個性が、必要に応じて付け足されながら積み重なってきた集合体である。そのメンバーは、次第に増えていくことが多い。CEO自身もそのチームに加わり、メンバーと議論し、時にはチームを擁護するが、「このチームはそもそも何のために存在するのか」と問うことはほとんどない。
エグゼクティブチームの設計が不十分だと、意思決定のスピードが遅くなり、責任の所在が曖昧になり、活力が減退する。その結果、エグゼクティブチームは、戦略実行のためのメカニズムではなく、近況報告と政治的駆け引きの場になる。そして、CEOは、一人ひとりは優秀なリーダーたちが集まっているのに、なぜうまくいかないのかと当惑することになる。
本稿では、CEOが意図を持ってエグゼクティブチームを設計することを妨げる「神話」を打ち消し、そのうえで、CEOの戦略に沿ったエグゼクティブチームを築くための方法を示す。
「クラブ化」の落とし穴
最高幹部たちが入念に設計された有能なエグゼクティブチームにならず、言わば「クラブ化」してしまう根底には、いくつかの誤った思い込みがある。具体的には、以下のような「神話」が根を張っている。






