採用候補者がAIを使う時代に、面接官が見るべき5つの力
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サマリー:AIツールの進化により、採用候補者がAIの支援を受けて質問に答えることは珍しくない。面接官は、候補者に画面共有を求めて「AIを使っていない証拠」を確認したくなるかもしれないが、それはかえって不信感を招き、優秀な人材を遠ざけるおそれがある。 より賢明な方法は、面接の進め方そのものを見直すことだ。重要なのは、AIには再現できない人間的なスキルをどう見抜くかにある。本稿では、AI時代の採用面接において、人間にしかできない能力を見極めるための5つのポイントを紹介する。

面接中、候補者がAIを使っていることに気づいたら

 採用面接でいくつか質問をしたところで、「あれ」と違和感を覚える。やけに回答が洗練されている(あるいは洗練されすぎている)。こちらの質問の後、いつも少し間が空く。そして視線がカメラの外を泳いでいる。チャットGPTが回答を示しているのは、ほぼ間違いない。

 AI時代の採用へようこそ。テクノロジーは候補者の面接準備を助けるだけでなく、面接の代行までしてくれる時代だ。不快感を覚えるかもしれないが、けっして驚くべきことではないと、エグゼクティブ人材紹介会社コーダ・サーチ・アンド・スタッフィング(Coda Search & Staffing)のテクノロジー採用担当マネジングディレクターのマイク・カイルは言う。「採用担当者がチャットGPTを使って職務記述書を作成し、AIで応募者をふるいにかけているならば、候補者が面接でチャットGPTを使ったとしても、驚くべきことではないはずだ」

 AIを避けて通れないいまの時代に、リーダーらは新たな課題に直面している。チャットボットが回答を引き受けている時、どうすれば相手の真の能力を評価できるのか。採用マネジャーは、候補者に画面共有を求めてAIを使っていないことを証明させたいという誘惑に駆られるかもしれない。だが、それは相手を信用していないと言っているも同然であり、候補者を遠ざけるという逆効果をもたらす可能性がある。

 より賢いアプローチは、面接の方法を見直すことだと、トロント大学ロットマンスクール・オブ・マネジメントのティジアナ・カシアロ教授(組織行動学)は言う。「探偵のように振る舞って、候補者の行動を監視すべきではない」と彼女は言う。「目指すべきは、チャットGPTの回答を読み上げるだけでは通用しない面接環境をつくることだ」

 言い換えると、AIを使っていることを暴こうとする必要はない。それよりも、候補者がAIには再現できないヒューマンスキルを持っているかどうかに注目するのだ。そこで心がけるべき5つのポイントを紹介しよう。

採用候補者はうまく雰囲気を読み、社会的なサインに反応できるか

 たしかに、奇妙な間やさまよう視線、ぎこちない話し方など、サインはいくつかある。しかし、それがAIによるものであれ、単に面接への緊張であれ、重要なのは社会的なサインを読み取って適応できるという、基本的な対人スキルを候補者が持っているかどうかだ。

 カイルは、面接の核心に入る前に候補者と雑談をして、基本的な話し方のパターンを把握することを勧める。「相手のコミュニケーションスタイルを把握するのだ」と彼は話す。

 ひとたび基本を把握したら、彼らが会話の変化にどう対処するか注目しよう。面接官が口調やボディランゲージを変えたり、相手の回答に穏やかに反論した時、候補者が気づいて調整するか観察しよう。その反応は、候補者の自己認識能力や、相手の態度を読む能力があるかどうかを示している。

「感情的知性、つまりソフトスキルは、能力とは切り離せない」とカシアロは言う。「こうしたスキルは、候補者があなたのチームや同僚、顧客とどのように協力するかに決定的な影響を与える」

複雑な概念をどのように論じ、情報を結びつけるか

 たとえ候補者が面接中にチャットボットを使っていても、完全にそれに頼るのと、自分の考えを構築するための補助に使うのとでは大きな違いがあると、カシアロは話す。

 カシアロは大学教授としての経験から、誰もが同じAIツールを使える環境にあっても、際立ったレポートを提出する学生がいるのを見てきた。「論理の組み立て方や情報のつなげ方を見れば、誰が批判的思考をしているかわかる」と彼女は言う。「情報に基づきアイデアを洗練させる学生もいれば、与えられた情報を列挙するだけの学生もいる」

 カイルは、採用マネジャーもこうした資質に注目すべきだという。明確な正解のない漠然としたシナリオを示して、採用候補者が不透明性にどのように対処するかを観察するのだ。そして、彼らがどのように論拠を示し、アイデアを結びつけるかを聞こう。

「『Xについて知っていることを教えてください』ではなく、『この状況に、あなたならどう対処しますか』と質問するのだ」と彼は言う。「記憶した情報をどのくらい思い出せるかよりも、どのような考え方をするのかが重要だ。テクノロジーを使って情報を記憶しているのはみんな同じだ」

候補者の質問は、どのように会話を前進させるか

 候補者が好奇心や批判的思考を持つかどうかを判断するもう一つの方法は、質問をする意欲や、情報の不足を見抜く能力を見ることだ。

 カイルは、意図的に、漠然とした質問や重要な情報を欠いた質問をすることを勧める。候補者が情報の不足に気づき、さらに詳しく尋ねてくるかを確認するのだ。たとえば、データエンジニアの候補者には「AからBへまでのデータパイプラインをどのように構築するか」を尋ね、財務部門の候補者には「当社の月末決算をどのように進めるか」を聞くことができる。

「これは一般的な質問だ。もし相手がありきたりで型にはまった答えをするなら、原稿を読んでいるだけだろう」とカイルは言う。「でも、不明点を確認したり、詳細を聞いてきたら、批判的に考えている証拠だ」

会話が予想外の方向に進んだ時、どう対処するか

 会話が脱線した時、候補者がどのように反応するかに注目しよう。なじみの領域ではスムーズに話せるが、未知の領域でつまづくなら、予期せぬ問題への対処方法を知ることができると、カイルは言う。

 面接の途中で、候補者を驚かせるようなリクエストをすることをカイルは提案する。たとえば画面を共有してもらい、これまでに手掛けたプロジェクト案やコーディング、あるいは関連する資料について、順に説明してもらうのだ。「すべてのポジションに適したアプローチではないかもしれない」と、彼は言う。「だが、一部のポジションでは、候補者が自分のプロセスや判断、そして次にどう改善するかを語るきっかけになる」

 もちろん、その目的は候補者の画面を監視することではない。ただ、彼らが冷静さを保ち、自力で考え、準備なしで物事を説明できるかどうかを見るのだ。

 カイルは、どのくらいの頻度でAIを使い、何に使っているかを尋ねることも勧める。この質問をすると、相手がAIツールをどのくらい使い慣れているか、プライベートや仕事もどのように使っているか、そして組織内での導入の助けになるかがわかる。

「私の経験では、日常的に(AIツールを)使っている人は、その限界や、できることとできないことを知っているため、依存しすぎない傾向がある」

他者と協力し、その場で問題を解決できるか

 一部の組織は、最終面接は対面実施を義務づけているとカイルは語る。「これは毎日出社する必要のないハイブリッド勤務の企業にとって理にかなっている」と彼は言う。「対面での面接、とりわけホワイトボードやケースディスカッションを利用すると、より協働的な面接になるという利点もある」

 ただし、対面面接はコストがかかり、調整も複雑で、必ずしも実用的とは限らないとカシアロは言う。より簡単な代案策として、集団面接がある。3~4人の候補者が同時にオンライン会議に参加し、チームでの話し合いや問題解決に取り組むのだ。

 集団面接は、一対一の面接よりもテンポが速く、よりダイナミックだとカシアロは言う。候補者の実務能力やチームワークの資質も、より明確に見えてくる。誰が他人の意見をよく聞き、それを発展させるか、誰が控えめな人を会話に引き込むか、あるいは誰が会話を支配し、他人の話をさえぎるかといったことがわかる。「もちろん技術的なスキルは必要だが、周囲をまとめ、複雑なやり取りを管理し、多様な視点を統合できる人材であることは極めて重要だ」

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 候補者があなたの面接でAIを使う可能性は高い。そして、たとえそれに気づいても、あなたにできることには限りがある。細部をすべてコントロールしようとするのではなく、そこから何を学べるかに意識を集中しよう。採用候補者は、漠然とした情報にどう対処するか、どのように問題を理解するか、そして予期せぬことにどのように適応するか。結局のところ、「チャットボットがあなたの面接に合格できるなら、それは候補者の問題ではない」とカイルは言う。「それは、あなたの問題だ」


"Are You Interviewing a Candidate - or Their AI?" HBR.org, November 20, 2025.