後輩社員のキャリア支援をするリーダー側の男女差とその影響
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サマリー:スポンサーシップは後輩社員のキャリア形成に有効とされてきたが、支援する側であるスポンサー自身への影響は十分に検討されてこなかった。リーダーの視点からスポンサーシップを分析した最新の研究は、スポンサーとしての行動や負担に明確な男女差があることを示している。男性は自身のキャリアにも資する目標に集中しやすい一方、女性は複数の相反する目標を抱え、より大きな精神的負担を負いがちなのだ。本稿では、より公平で相互に利益のあるスポンサーシップのあり方を検討する。

男性と女性ではスポンサーシップへのアプローチが異なる

 みずからの社会関係資本(社会的な影響力や人脈)を使って後輩社員を支援する「スポンサーシップ」は、不平等の解決策や人材パイプラインの育成のカギと謳われることが多い。スポンサーされるほとんどの社員にとって一般的に有益なのは事実だが、これは後輩社員だけが利益を得るものではない。後輩社員を人とつなぐことは、スポンサー自身にとっても同僚や上級リーダーと関係を構築し、成長する機会となる。しかし、スポンサーシップがスポンサーに与える影響について調査した研究はほとんどない。スポンサーシップには、ウイン・ウインの状況を促進しやすいものと、そうでないものがあるのだろうか。

 筆者らの新たな研究(スポンサーシップをリーダーの視点で調査した初の実証的研究)によって、スポンサーシップは、特に女性リーダーにとって複雑な現実を呈しうることがわかった。研究結果によれば、男性と女性ではスポンサーとしての目標が異なり、それが仕事上のネットワークの活用法にも影響を与えている。男性スポンサーは、自分自身のキャリアにも利益のある一つの目標を優先し、それに集中する傾向がある一方で、女性は主に相手の成長に向けた複数の、しばしば相反する目標のバランスを取ることに多大な努力を払う傾向がある。これは、スポンサーシップに伴うコストに男女格差があることの証拠である。

 女性はどうすればこのコスト格差を克服しながら、後輩社員の成長を支援できるのだろうか。最初のステップは、その原因を理解することである。筆者らは、女性が相互に利益のある関係を妨げる壁に気づき対処できるよう、その方法を調査結果から探った。

男性は出世のためにスポンサーをするが、女性はそうではない

 男性と女性のスポンサーシップに対する考え方を理解するために、筆者らは、スポンサーの目標と、その結果として彼らがネットワークをどのように活用したかを調査するいくつかの研究を実施した。米国のさまざまな業種にわたる1700人以上のプロフェッショナルからデータを得た。参加者は全員、管理職とキャリア支援の経験を有する。彼らのスポンサーとしての目標とネットワーク戦略を分析すると、男女間に差が見られた。男性はスポンサーシップを自身の出世のためと捉えるが、女性はそうではなかった。

 一般的に、女性のほうが男性よりもスポンサーとしての目標が多く、その目標が相反する傾向が強かった。女性は、自身のニーズと相手のキャリアにとって最善なこととのバランスを取ろうとする傾向がある。たとえば女性スポンサーは、後輩社員の知名度を高めるために、上層部の前でプロジェクトの進捗報告を行わせようとするが、その際、同僚に働きかけてそのプレゼン機会をつくろうとする。そうしながら自身の評判を維持しようとするが、その行動は周囲からは貪欲なスポンサー行動と見なされている可能性がある。

 ここには相手のニーズと自分自身のニーズの両立という目標があり、より複雑で困難である。多くのリーダーは、複数の優先事項やタスクのバランスを取りながら同時に進めることに慣れてはいるものの、心理学と神経科学の研究によれば、人は自分が思っているよりもマルチタスキングが得意ではないことがわかっている。目標に関していえば、複数の目標を同時に追うことは、それらの達成をより困難にすることが広く知られている。女性スポンサーは男性スポンサーよりも、相反する可能性の高い複数の目標を持つことによって、より困難な心理的経験をしている。これは、スポンサーシップに伴う精神的負荷における男女格差である。

 対照的に、男性スポンサーが追求する目標は少なく、その目標はより自分自身に利益のあるものである。彼らの目標は、スポンサーシップをどのようにスポンサーである自身の出世に役立つかに重点を置いている。たとえば男性スポンサーも、後輩社員に上層部の前でプロジェクトの進捗報告を行う機会を見つけて、後輩の知名度を高めようという最初の目標は同じかもしれない。だが彼は、自分が仕事上の関係を深めたいと考えている、上層部の意思決定者に働きかけてその機会をつくろうとする。簡単に言えば、筆者らの研究によれば、男性スポンサーはウイン・ウインの状況が可能である場合にのみ、自分の出世にメリットがあるスポンサー行動を取るのである。

 さらに、目標におけるこの男女差は、スポンサーの階層が上がるほど大きくなる。男性スポンサーの出世重視傾向は、スポンサー経験を積むごとに強くなる。基本的に、男性はスポンサーになる回数が増えるほど、利己的な目標を設定する傾向が強くなる。女性のスポンサーとしての目標は、キャリアアップしても、スポンサーとしての経験を積んでも変わらない。