顧客の「こうなりたい」という願望を真に理解できているか
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サマリー:企業が顧客に提供できる新たな価値として、顧客の「こうなりたい」という願望の支援がある、とB. ジョセフ・パイン2世は、新著 The Transformation Economyで提唱している。本稿では、人々が抱く4タイプの願望と、企業が製品、サービス、体験を創出する際にそれらをどう活用すべきかについて、同書より紹介する。

人々が抱く4タイプの願望

 B. ジョセフ・パイン2世は、新著 The Transformation Economy(未訳)で、企業が顧客に提供できる新たな価値として「自己変革」を提唱している。同書からの抜粋・翻案である本稿では、人々が抱く4タイプの願望と、企業が製品、サービス、体験を創出する際にそれらをどう活用すべきかを考察する。

 顧客の願望実現を支援する機会は、世界中の企業が有している。かつて同僚たちと『ハーバード・ビジネス・レビュー』で下記のように論じた。

我々はどれほど希望や野心に満ちあふれていても、自力で大きな変化を成し遂げるのはかなり難しい。消費者とパートナーを組んで、対象者の生活の基本的な部分を改善し、「新しい自分」を実現するための後押しをする「トランスフォーメーション・ビジネス」が経済的機会をもたらすことを企業は認識すべきである。

 トランスフォーメーション(自己変革)を提供するには、顧客が自社から購入する理由を理解し、そのアウトカム(目指す結果)を実現するためにリソースを結集する必要がある。

 そのためにはまず、願望には2つの次元、「質」と「規模」があることを理解しなければならない。

質:あらゆる自己変革はアイデンティティの変更、すなわち自己認識の転換だが、「性質」の変化を求める願望と、「度合い」の変化を求める願望がある。性質の変化とは、本質や価値観や目的といった根幹となるアイデンティティが変わることであり、世界における存在の仕方に関わる。一方、度合いの変化は、根幹ではなく、アイデンティティの周縁的な側面が変わることだ。たとえば、態度や行動、適性、能力、スキルなど、世界における振る舞い方に関わる。

規模:自己変革願望には、大きなものから小さなものまである。大きな願望は私たちに多大な影響を与え、人生の軌道を大きく変えようとするものだ。だが、人は小さな変化も求める。たとえば健康増進、経済的安定、教育における段階的改善などだ。人生の軌道は変えないが、それでも意味がある。

 したがって、顧客願望は2つの次元から4タイプに分類され、企業はそれぞれを支援することができる。

転身:性質の大きな変化

 変革が極めて個人的で本質的な深い変化を伴う場合、その願望は「転身願望」と呼べる。このタイプの願望は、親ではない状態から親になる、あるいは医学生から外科医になるといったアイデンティティ変更に対する渇望である。

 このカテゴリーの人々が変化に対して取るアプローチは2通りある。一つは、望む自己変革を明確に意識して変化に向き合う方法である。そのため、自己概念が実際の自己変革に先行することがある。このレベルの変革を導く際は、たとえば「新たな自己と整合しなくなった側面を手放す」など、自己変革の予期せぬ影響に対処する支援を提供することが必要だ。重要なのは、顧客とともに、顧客自身が気づいていないかもしれないその側面を見つけることである。そうすれば、あとは古い自分を捨て、新しい自分になるための一連の体験を導ける。

 他方、自己概念の変化が実際の自己変革の後に訪れる場合がある。その場合は、その変化が顧客の生活に定着するように支援する必要がある。たとえば、チョイスセンター・リーダーシップユニバーシティが提供するEQリーダーシップ基礎講座では、気づきとブレイクスルーに焦点を当てた対面セッションを設けている。帰宅後も指導は継続され、個人の生活が教室になる100日間の「リビングEQリーダーシップ」が実施される。毎週、コーチングとリモートセッションが定期的に行われ、翌週までのストレッチ課題が与えられるため、学んだことを現実的な状況に応用できるようになる。