AIを価値創出に結びつけるリーダーの行動
Illustration by Patrick Léger
サマリー:AI導入が進む中、多くの組織が価値創出に苦戦している。その最大の障壁として経営幹部が挙げるのが「人的要因」だ。世界各国のリーダーを対象とした調査からは、AI変革が従来の断続的な変化とは異なり、終わりのない継続的な適応を強いる実態が浮き彫りとなった。リーダーには技術的理解以上に、不確実な状況下で指針を示し、社員の不安を解消する共感力や対話力が求められている。本稿では、調査で寄せられた声を交え、AI導入の成否を分けるリーダーシップの本質と、現場で実践すべき具体的な行動を紹介する。

経営幹部に聞いた、AI導入に伴って経験していること

 AIが組織全体に浸透する中、経営幹部は大規模な変革に対応し、成果を示すよう大きなプレッシャーを受けている。AIの導入はもはや試験的な段階に留まらず、日々の意思決定、ワークフロー、顧客へのサービス提供を左右する存在となりつつある。

 だが、AI投資が拡大しているにもかかわらず、多くの組織が実験的な取り組みを実際の価値創出へと結びつけることに苦戦している。AIおよびデータ分野の世界のリーダーを対象とした2026年の調査では、93%がAI導入の最大の障壁として人的要因を挙げた。ただし、その一方でリーダーたちのAIの潜在力への確信は揺らいでいない。

 こうした力学が現場でどう作用しているのかを理解するため、ザ・ポジティブ・グループは、プロフェッショナルサービスや金融サービスから消費者ブランド、航空、ライフサイエンスまで多様な分野のグローバル企業の経営幹部を対象に、詳細な質的調査を実施した。AI戦略、人材への影響、リスクを統括するCEOやCHRO、最高イノベーション責任者、各部門リーダーなど計35人へのインタビューとフォーカスグループを通じて、彼らがAI導入に伴ってリアルタイムで経験していること──方向性を決める議論、適応力が試される局面、普及を支える行動──を検証した。

緊張が生じている領域

 AIが戦略上の優先事項である点では一致しているものの、組織のあらゆるレベルで期待がたえず変化する中、継続的な変化によって圧力が高まっているとリーダーたちは指摘した。

「目標が常に変動している」

「重要なリーダーシップスキルは、変化へのレジリエンスだ。過去の断続的な変革とは異なり、AIは継続的な変化をもたらすため、企業全体でレジリエンスを構築しなければならない」
──テクノロジー企業 CHRO

 AI導入を過去の大規模変革と対比して説明したリーダーも複数いた。断続的な取り組みや新システム、組織再編、オペレーティングモデルの変更と違って、AIは終わりの見えない継続的な変化を引き起こしている。

「目標が常に変動している。6カ月前に自分たちが言ったことは覚えているが、現実には目標が変わってしまった。方向性が変わり続けると、たとえそれが正当な変更であっても信頼性が揺らぎかねない。難しいところだ」
──プロフェッショナルサービス企業 経営幹部

 変化のスピードが速いため、進展の受け止められ方にもゆがみが生じている。

「変化が徐々に起こることはめったにない。むしろ気候変動に似ていて、何も変わっていないように見えていたのに、突然、世界がまったく違って見える。そうした急激な変化の中で組織を率いるのは極めて難しい」
──プロフェッショナルサービス企業 人材開発の責任者

 多くの組織が、長年にわたって複数の変革を重ねており、そのうえでさらにAIが到来した。

「この数年、大きな変化が続いており、それによる疲労を実感している。変革の必要性が明らかに思える場面でも、人は自分の感情やキャリアの段階次第でまったく異なる受け止め方をする。あまりに強く、速く導入を推し進めると、逆効果になりかねない」
──グローバル法律事務所 イノベーション戦略の責任者