Step1◆KPIの設定は正しいか?
質問者の会社は建設資材の商社、つまり営業が中核です。従来のKPIが引き合い案件数、商談時間、平均受注金額、成約率だったところに、提案に対する見積の歩留と見積から受注に至る歩留を見ていこうと考えたわけですね。
みなさんご存じのように、KPI とは、単なる目標値ではなく、業績を向上させるうえで「自分の活動の効率と効果を高めるための重要な指標」です。この指標の最大の利点は、自分の活動をコントロールできることです。ということは、目的を達成するうえで重要でない指標、あるいは似たような指標をいくつも設定するのは、本来の使用目的にそぐわない。はっきり言って、それは間違っています。
まず、質問者の会社の現場認識から始めましょう。そもそもKPIの項目設定は正しいのでしょうか? 成果につながらないということですから、KPIの項目自体に問題がある可能性が高いようです。
最初は引き合い案件数です。これをKPIにする意味がわかりますか? 引き合いとは、顧客からの問い合わせです。それがどのような経緯でもたらされたものなのか、担当者の努力の賜物か、前任者あるいは支店長の力か、会社の評判ゆえなのかがわからない。自分の営業活動をコントロールして引き合いを増やせる可能性があるとはいえ、正しく評価しにくいのが難点です。正しく評価できない指標だと、未達成の場合、他人のせいにしてしまうからダメなのです。
次に、商談時間についてはどうでしょう? これは自分でコントロールできますが、そもそも商談時間は長いほうがいいのでしょうか? それとも短いほうがいいのですか? 質問者は、おそらく、「受注金額が大きければ商談時間は長くてもいいが、小さい場合はコストがかかったり機会損失につながったりするので、判断できない」と答えそうですね。
そうなのです。商談時間当たりの受注金額というのは、分析上の意味がありそうに見えますが、実際にKPIとして用いる際の判断基準が細かすぎて、結局誰も注意を払わない。くわえて言えば、時間を気にする営業は顧客から信頼されませんのでご注意を(笑)
そして、平均受注金額と成約率。これらはどうですか? 平均受注金額は、顧客から商品指名を受けたことを示すものです。優秀な営業マンなら、他の商品まで勧めて成約させるでしょうから、これは意味がありそうです。
成約率は、引き合い案件のうちどれぐらい受注したかを示すものですが、これは分母になる引き合い案件数自体が誰の貢献によるものかがわかりにくい。よって、成約率も正しい評価軸とは言い難い。