KPIの目標値の妥当性
これまで述べてきたことを整理すると、使えそうなKPIは次の3つです。
1.対象顧客(既存・新規の総数)に対する受注率
2.提案に対する見積獲得率
3.見積に対する受注率
1は、対象顧客数(総数)に対してどれぐらい受注したかを示すものです。これは、対象顧客について与信を含めて考える必要があるので、それも含めて営業の力量であるとはいえ無難なところに落ち着く傾向があり、KPIにする必要はないでしょう。ただし、先に意味がありそうだと指摘した平均受注金額は、歩留を知るための活動の後で考慮してみると役に立つと思います。
もう1つ、KPIを考える時に大事なのは、その目標値が妥当かどうかです。質問者が管轄する中国・九州ブロックの月間平均歩留率(見積に対する受注率)は63%ですね。ところが、提案に対する見積獲得率(430/1200)は36%とかなり低い。平均値が63%だからといって、前段階の指標で同レベルを目指そうとしても、そううまくいくわけではないのです。
そもそも提案書の提出件数が1200件ですから、営業担当1人当たり月間19.4件、つまり1人当たり1日1点の提案書を作成していることになる。訪問した会社すべてから提案書を求められるわけではないので、対象顧客当たりの提案書提出率を50%としても、営業は1日2社の既存あるいは新規の顧客を訪問して、なおかつ毎日提案書を1点作成しなければならない……これは無理というものでしょう。
どうやら、「数打てば当たる」的な営業活動をしているようですね。もっと対象顧客数を絞り込んでから、質の高い提案書を作成することに注力して、まずは見積獲得率の向上を目指すべきでしょう。提案書の質が高ければ、見積で大きな間違いをしないかぎり、受注確率はかなり向上するはず。これを機に、今後1カ月は、対象顧客を見直し、ニーズを汲み取り、それらを反映した提案書を作成するテスト期間にしてはどうでしょう。その結果を踏まえて、KPIを決めれば確実に成果を上げられるはずです。
さらに言えば、生産性の高い順に営業マンを3つのグループに分けて、グループ別に平均KPIを管理することをお勧めします。営業本部長に、こうした実データに基づく施策提案であれば、営業本部長も興味を示すはず。その際のプレゼンは、本部長が理解しやすいようにまとめ直すことを忘れずに(笑)
◆KPI設定のポイント◆
1.KPI は「自分の活動の効率と効果を高める」ための指標であり、業績向上
に直結するものを設定する。
2.自分の営業活動をコントロールできる指標を設定する。
3.顧客ニーズを満たす提案書とプレゼンテーションが、受注に直結すること
を肝に銘じる。
◆具体的なアクション◆
1.現在のKPIの妥当性を検証し、各自がコントロールできて業績向上に直結
するKPIを設定する。
2.訪問すべき重要顧客を決定するほか、新規・既存の区別や訪問順位などを
工夫する。
3.質の高い提案書を作成し、見積獲得率と受注率を高める。